- 著者
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森川 康之
四井 資隆
松本 尚之
- 出版者
- 大阪歯科学会
- 雑誌
- 歯科医学 (ISSN:00306150)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.1, pp.35-48, 2008-03-25
- 被引用文献数
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歯列矯正装置が磁気共鳴画像装置(以下,MRIと略す)に及ぼす影響について,多岐の材料の組み合わせを実験的に検討した.試料および方法として,プラスチック製歯列模型にブラケット3種類(スチール,セラミック,レジン)とワイヤー4種類(スチール, NiTi,ヒートアクチベートNiTi,ベータTi),リガチャー2種類(スチール,エラスチック)を組み合わせた装置を作製の上,1.5Tesla MRI装置を使用し,6種類の撮像シーケンス(以下,撮像法と略す)で撮像した.得られた画像で障害について,信号強度の変化と信号欠損の大きさ,信号欠損直近のひずみ,3次元構築像でのゆがみの計測を行い,以下の結果を得た.すべての部品がスチール製の矯正装置を装着した場合にGR-T2法で極端な信号強度の低下を示し,画像の表示が困難となった.同じ組み合わせで最大の信号欠損を形成し,磁場方向で160mm,左右方向で145mm,上下方向では137mmに達した.セラミック・ブラケットにスチール以外のワイヤ一をエラスチック・リガチャーで結紮した場合は障害像を発生しなかった.スチール・ブラケットを装着した場合,MRIのすべての撮像で磁場方向に100mm以上の信号欠損を形成し,特にSE-T1法で広範囲に影響した.信号欠損周囲では縮小傾向で0.62倍,膨張傾向で1.58倍のひずみを示し,影響は広範囲に及んだ.3次元像ではスチール・ブラケットを装着した場合には,他の材料に関わらずほぼ10mm以上のゆがみを示し,その最大値は13.7mmであった.スチール製歯列矯正装置を用いた場合に最大の金属障害が発生するのはスチールが常磁性体であり,磁場断面積が大きいためである.しかし,スチール・ブラケット単独の場合でも大きな金属障害を生み出し,ブラケット相互間の電気的短絡がない状態でも障害を生ずる.したがって,磁力線に対する影響は相乗効果かあるものと考えられる.MRI検査を用いる可能性のある歯科矯正治療患者には,スチール製矯正装置を避け,他の材料の装置作製が必要である.また,撮像法はFSE法やFGR法を用いるべきであると考えられる.