- 著者
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田中 宏明
- 出版者
- 宮崎公立大学
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.145-167, 2007
チャールズ・ベイツ、トーマス・ポッゲ、そしてマーサ・ヌスバウムがコスモポリタニズムに関する議論をリードしていると言っても過言ではない。ベイツとポッゲは、ジョン・ロールズの正義論を出発点としながらコスモポリタン正義論を構築してきた。しかし、ロールズはコスモポリタンではなく、むしろコスモポリタン正義論の批判者であり、そして国際正義論を提起している。ベイツもポッゲもともにロールズの国際正義論には批判的であり、それぞれ独自のコスモポリタン正義論を提示する。そしてロールズの正義論を批判的に論じてきたのがヌスバウムである。本稿では、最初に、ロールズの国際正義論の概要を述べ、その立場からのコスモポリタン正義批判について述べる。次に、ベイツの『政治理論と国際関係』をもとに彼のコスモポリタン正義について考察する。ベイツはホッブズに依拠する政治的リアリズムを批判する中で、国際的相互依存の深化(今日でいうグローバリゼーション)にともなって国際社会と国内社会の類似性に着目し、そして国家を自律的存在とみなしうるのはすべての人間であると論じる。ベイツは、ロールズの正義論をグローバルに拡張し、グローバルな分配の正義論を展開する。さらにベイツはロールズの立場を社会的リベラリズムと捉え批判する。そしてベイツに対する批判も検討する。