著者
屋良 朝彦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.93-100, 2005
参考文献数
22

未知のリスクにいかに対応するべきか。HIVによる血液汚染事件では医療関係者、行政担当者、患者とその家族、および市民全体がこの問いに直面した。このような問いに対して、近年、欧州を中心に「予防原則」が注目されている。「予防原則」とは、科学技術の発展によって生じる環境破壊や医療・公衆衛生等の様々な問題に対処するために、欧州を中心に採用されつつあるものである。その主要な要素を四点挙げてみる。(1)科学的確実性の要請の緩和、(2)立証責任の転換、(3)ゼロリスク・スタンダードの断念、(4)民主的な意思決定手続きである。しかし、予防原則はその適用において曖昧な部分が多く、ケースバイケースでその内実を「解釈」し、明確にしていく必要がある。本発表では、予防原則を薬害エイズ事件に適用することによって、当時どのようなリスク対策が可能であったかを検討しつつ、予防原則の有効性を検証する。

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