著者
堀田 義太郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.91-98, 2006-09-25

本稿では、ES細胞研究をめぐる議論の前提になっている「ヒト胚の道徳的地位」という枠組みを問題にする。従来のES細胞研究をめぐる議論はこの枠組みを軸にしてきたが、それによって看過される問題が存在する。それは「女性の身体への負担」をめぐる問題である。それは特に、卵子提供を前提にしたクローン胚からのES細胞研究をめぐる倫理問題を考察する上で不可欠の問題である。本稿は、現在のES細胞研究で用いられている「余剰胚」は、不妊治療における女性の身体への負担を軽減するための不可避的な産物であり、その結果を事実上利用しているとも言えるES細胞研究において、女性の身体への負担の問題は重要な位置を占めている、という点に焦点を当てる。この点、「ヒト胚の道徳的地位」に対する立場から導出されるES細胞研究への指針においては、「女性の身体の負担」の問題は構造的に看過されることになる。「ヒト胚の道徳的地位」という問題とは独立した水準で、「女性の身体への負担」が考慮されるべきである。

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