著者
木村 利人
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.60-64, 2007
参考文献数
13

「戦争とテロ」の問題は、バイオエシックス研究者が取組むべき最も緊急な課題の一つである。本稿では、正に「戦争とテロ」の時代であった1970年代のベトナムでの筆者の体験が、学会のシンポジウムで使用されたビデオの映像を手がかりにNarrativeの手法により展開される。筆者がベトナム戦争の時期のサイゴン大学で教鞭をとっていた時に知りあった一人の学生から広範な地域にわたる先天性奇形児の出生、死産や自然流産をもたらしている「枯葉作戦」の実態を告げられて衝撃を受けた。これを契機として、ベトナム民族皆殺しのGenocideを目的とする生物化学兵器の使用・悪用を排除し、いのちと自然、環境を守り、育てる新しい「いのち」と「倫理」に焦点を合わせた新しい学問としての「超学際的・バイオエシックス」の構想をするに至った。その後、人間生命と人権を基盤にして、学問の領域を越えた相互協力関係の中から、グローバルな人権運動を基盤にしつつ欧米やアジアなど世界の各地で、同僚たちとともに、筆者の構想による「超学際的・バイオエシックス」を展開していくことになった。バイオエシックスを臨床医療における応用倫理学の分野へと矮小化してはならない。21世紀のいのちの未来展望は、超学際的バイオエシックスよって新地平を切り開かれることになる。真の平和をもたらすための第一歩は「戦争とテロ」に抗するバイオエシックスを国際的視野において真摯に展開することから始まるであろう。

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