著者
木村 利人
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004-01

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1846号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2004/1/21 ; 早大学位記番号:新3686
著者
木村 利人
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.60-64, 2007
参考文献数
13

「戦争とテロ」の問題は、バイオエシックス研究者が取組むべき最も緊急な課題の一つである。本稿では、正に「戦争とテロ」の時代であった1970年代のベトナムでの筆者の体験が、学会のシンポジウムで使用されたビデオの映像を手がかりにNarrativeの手法により展開される。筆者がベトナム戦争の時期のサイゴン大学で教鞭をとっていた時に知りあった一人の学生から広範な地域にわたる先天性奇形児の出生、死産や自然流産をもたらしている「枯葉作戦」の実態を告げられて衝撃を受けた。これを契機として、ベトナム民族皆殺しのGenocideを目的とする生物化学兵器の使用・悪用を排除し、いのちと自然、環境を守り、育てる新しい「いのち」と「倫理」に焦点を合わせた新しい学問としての「超学際的・バイオエシックス」の構想をするに至った。その後、人間生命と人権を基盤にして、学問の領域を越えた相互協力関係の中から、グローバルな人権運動を基盤にしつつ欧米やアジアなど世界の各地で、同僚たちとともに、筆者の構想による「超学際的・バイオエシックス」を展開していくことになった。バイオエシックスを臨床医療における応用倫理学の分野へと矮小化してはならない。21世紀のいのちの未来展望は、超学際的バイオエシックスよって新地平を切り開かれることになる。真の平和をもたらすための第一歩は「戦争とテロ」に抗するバイオエシックスを国際的視野において真摯に展開することから始まるであろう。
著者
星野 一正 木村 利人 唄 孝一 中谷 瑾子 青木 清 藤井 正雄 南 裕子 桑木 務 江見 康一
出版者
京都女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

文部省科学研究総合A研究班として『患者中心の医療をめぐる学際的研究』というテーマのもとに、平成3年度からの3ヵ年間、専門を異にしながらもバイオエシックス(bioethics)の観点から研究をしている十名の共同研究者と共に研究を進めてきた。単に医学・医療の面からの研究では解明されえない人にとって重要な問題について、宗教学、哲学、倫理学、法律学、医療経済学、生物科学の専門家に、医学、医療、看護などの医療関係者も加わった研究班員一同が集まって、異なる立場から議論をし、さらに既に発表されている文献資料の内容を分析検討し、現在の日本社会に適した生命倫理観を模索しつつ共同研究を積み重ねてきた。第一年度には、主に「人の死をめぐる諸問題」を、第二年度には、主に「人の生をめぐる諸問題」に焦点を合わせて研究をし、第三年度には、前年度から進行中の研究を総括的に見直し、必要な追加研究課題を絞って研究を纏めると共に、生と死の両面からの研究課題についても研究を行った。最近、わが国において議論の多い次のようなテーマ:臓器移植、脳死、植物状態,末期医療、がんの告知、自然死、尊厳死、安楽死、根治療法が未だにないエイズ、ホスピス・ビハ-ラ、体外受精・胚移植、凍結受精卵による体外受精、顕微授精、男女の生み分け、遺伝子診断を含む出生前診断・遺伝子治療、人工妊娠中絶などすべて検討された。各年度ごとに上智大学7号館の特別会議室で開催してきた当研究班の公開討論会の第3回目は、平成6年1月23日に開催され、「研究班の研究経過報告」に次いで「医療経済の立場から」「法学の立場から」「生命科学の立場から」「遺伝をめぐるバイオエシックス」「生命維持治療の放棄をめぐる自己決定とその代行」「宗教の立場から」「臨床の立場から」の順で研究発表と質疑応答があり、最後に「総合自由討論」が行われた。今回は、3か年の研究を基にしての討論であっただけに、多数の一般参加者とも熱気溢れる討論が行われ、好評であった。