- 著者
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芦名 定道
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.2, pp.449-471, 2008-09-30
近代以降、キリスト教思想は近代合理主義との関わりの中で展開されてきた。キリスト教思想にとって大問題であったのは、啓蒙的理性によって提起された宗教批判であり、その批判の主なる担い手となったのは、実証主義的な近代科学であった。とくに、ダーウィンの進化論は、一九世紀における「科学と宗教の対立図式」-一方における無神論的自然主義と他方における創造科学論との間に典型的に見られる対立状況-の成立を促すことによって、現代の「科学と宗教の関係論」の主要な規定要因となっている。本論文では、リチャード・ドーキンスの宗教批判を手掛かりに、科学と宗教の対立図式において前提とされる合理性概念(狭い合理性概念=証拠主義的合理性)の解明が試みられる。対立図式の克服は、この狭い合理性概念を拡張することによって可能になるのであり、ここに現代キリスト教の思想的課題が見いだされるのである。