著者
芦名 定道
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.449-471, 2008-09-30

近代以降、キリスト教思想は近代合理主義との関わりの中で展開されてきた。キリスト教思想にとって大問題であったのは、啓蒙的理性によって提起された宗教批判であり、その批判の主なる担い手となったのは、実証主義的な近代科学であった。とくに、ダーウィンの進化論は、一九世紀における「科学と宗教の対立図式」-一方における無神論的自然主義と他方における創造科学論との間に典型的に見られる対立状況-の成立を促すことによって、現代の「科学と宗教の関係論」の主要な規定要因となっている。本論文では、リチャード・ドーキンスの宗教批判を手掛かりに、科学と宗教の対立図式において前提とされる合理性概念(狭い合理性概念=証拠主義的合理性)の解明が試みられる。対立図式の克服は、この狭い合理性概念を拡張することによって可能になるのであり、ここに現代キリスト教の思想的課題が見いだされるのである。
著者
芦名 定道
出版者
京都大學文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.147-244, 1999-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
芦名 定道
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1994

論文博第260号
著者
芦名 定道
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-12, 2018-03-31 (Released:2018-05-11)

The purpose of this paper is to rearrange the discussions about what the significance of neuroscience, which is currently rapidly developing, for philosophy of religion has and then to prospect the possibility of neuroscience in relation to philosophy of religion. First of all, our discussion begins after confirming that philosophy of religion understood in this paper includes both philosophy of religious studies and philosophy of religion. The following development of neuroscience is interesting in terms of overcoming the conflict between science and religion. 1. Studies on individual brains remarkable in the neuroscience by the end of the 20th century have shown approaches to the conflict schema between science and religion in the setting of determinism versus free will. 2. On the other hand, social brain research since the beginning of the 21st century shows the possibility of development of a different argument from the conflict schema. This social brain research could be interpreted as responding to the development of the philosophical anthropology of the 20th century and furthermore it provides an opportunity to reconsider the human understanding of Christianity.
著者
芦名 定道
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、拡張された自然神学を、科学技術と東アジアという二つの文脈で具体化するという研究目的にむけて進められてきた。まず、科学技術の文脈。特に、原子力、脳科学、AI、遺伝子工学といった現代において問題化しつつある諸問題について、宗教思想(特にキリスト教思想)との接点が人間理解(人格概念)にある点が明らかになった。科学技術の神学においては倫理学から文明論までがその射程に入れられねばならない。次に、東アジアの文脈。その成果は、『東アジア・キリスト教研究とその射程』としてまとめられた。無教会キリスト教、特に矢内原忠雄の原子力論において、科学技術と東アジアの二つの文脈を結びつける可能性が示された。
著者
芦名 定道 TRONU MONTANE CARLA
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-11-07

トロヌ・カルラ外国人特別研究員との共同研究では、2018年度も外国人特別研究員によって日本国内と海外において活発な研究発表がなされたが、受入研究者の側の研究を含めるならば、次の4点に、研究成果をまとめることができる。(1)キリシタン時代のキリスト教を担ったイエズス会について、その宣教方針である「適応主義」を、キリスト教思想における「適応の原理」として取り出すことができ、また諸修道会における日本人殉教者の顕彰の在り方についてもその実態の比較検討がなされた。(2)キリシタン研究を東アジアのキリスト教研究へと方法論的に関連付けること、また、その中に東アジアにおけるカトリック諸修道会の動向を結びつけることが試みられた。これは重要な成果である。(3)キリシタン殉教を、江戸幕府の宗教政策を経て、明治から現代までのキリスト教思想史につなぐことがなされた。これは、以下に述べるパネル発表で論じられ、論文化された。(4)現代の記憶論・証言論を参照しつつ、現代キリスト教思想における殉教論の可能性を考察した。これについても、次に述べるパネル発表で論じられ、論文化された。共同研究はさまざまな成果を生みだしたが、最大の成果は、次のパネル発表とその論文化である。パネル発表は、日本宗教学会・第77回学術大会(大谷大学、9月9日)において、「日本におけるキリシタン殉教者の歴史的記憶」として実施された。このパネルは、外国人特別研究員と受入研究者のほかに、淺野淳博氏(新約聖書学者)と狭間芳樹氏(キリシタン研究者)を加え、4名の発表者によって、構成された。このパネルでは、新約聖書研究者を加えることによって、日本のキリシタン殉教がキリスト教史(特に古代の殉教史)に実証的に関連付けられることができたが、今後の研究では、こうした時代を越えた比較研究の実施が重要であることが明らかになった。