- 著者
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山岸 明子
- 出版者
- 順天堂大学
- 雑誌
- 医療看護研究 (ISSN:13498630)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.1, pp.130-135, 2006-03
本稿では,高等養護学校でおこった2人の少年の思いがけない変化を描いた山田洋次監督の映画「学校II」をとりあげ,何が2人の少年を変えたのか,そこに教師の働きかけ・教育はどう関与していたのかを教育心理学の観点から分析し,それに基づいて大人は子供にどのようにかかわったらいいのかについての考察を行った。教師の熱心な働きかけによっても変わらなかった2人の少年が立ち直った要因として,1)教師ではなく仲間からの思いがけない働きかけ 2)少年たちの気持を理解しようとし,共感的にかかわる教師の対応 3)自分にも何かができるということの経験,4)教師による学習や自己統制への指導,が抽出された。以上の分析に基づき,子どもの発達的変化を促すものとして,大人との暖かく支持的な関係,親密な仲間や様々な他者との交流(子どもが他者をケアするような関係も含めて)が重要であり,そこで受容感や自分が有効性をもち必要とされている存在なのだという自己効力感を経験することが子どもを変えることが指摘され,更に子どもの能動性・自発性にもとづく教育だけでなく,時には大人が主導的にやらせて子どもに基本的な力をもたせて,自発的にやろうとした時にできるように準備を整えておくことの必要性が論じられた。