著者
新井 信之 内山 範夫 佐藤 哲郎 佐藤 とも子 植田 さおり 渡辺 和美 大谷 知子 須田 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-14, 2007-03
被引用文献数
1

目的:精神障害者生活訓練施設における精神障害者の賃貸アパート契約に至るまでの支援内容とその実際から,住宅確保に向けた課題を明らかにする。方法:T援護寮を退所し単身生活をはじめた29名を対象に,担当職員9名への半構造化面接及び利用者個人記録の内容を項目ごとに整理し、その人数を比較した。研究期間は2001年10月から2002年2月である。結果:対象者の診断名は統合失調症が最も多く24名で,その他は神経症,躁鬱病,人格障害などであった。年齢は平均41.2歳で,最年少20歳,最高齢65歳であった。賃貸アパートに退所した25名(86%)の経済基盤は障害年金や生活保護費の受給が主で,賃貸アパートの契約時に申告する職業がなく,また家族関係の悪化から保証人を家族に依頼できない者も5名いた。更に21名が精神疾患の罹患が契約上不利になると判断し病気を隠していた。結論:精神障害者の賃貸アパート契約では,家賃支払いの基盤となる就労先や保証人の確保,精神疾患に罹患しているという事実の扱いが大きな課題となっていた。今後の支援では,就労先の確保,保証人協会などの保証人制度の充実など具体的かつ実際的な支援の充実の必要性が示唆された。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.8-15, 2005-03-19

発達心理学が明らかにしてきた知見を参照しながら,思春期の心の危機を描いた文学作品-村上春樹氏の「海辺のカフカ」-について分析を行った。まず思春期とはどのような時期であり,思春期危機に関与している要因は何か,また危機を乗り越えるためには何が必要なのかに関する発達心理学の見解について述べ,それらと関連させながら,15才の主人公がどのような問題をかかえ,にもかかわらずなぜ危機を乗り越えることができたのかについて分析した。危機的状況を乗り越えることを可能にした要因として,1)情緒的及び実際的に支えてくれる人との支持的で暖かい関係,2)自分が必要とされている価値ある存在であることの実感と,「母親の過去」の事情を理解し許す気持ちになったこと,3)自立して生活する能力や,自己を内省したりコントロールする力-自我の強さをもっていること,が抽出された。それらは発達心理学が明らかにしてきたこととほぼ対応するものであった。
著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.73-81, 2006-03

高齢者専門急性期病棟における入院長期化の要因と退院支援の実際を,看護師の視点から明らかにし今後の課題を検討することを目的にフォーカス・グループ・インタビューを実施した。入院期間が長くなる要因として,【退院目標の提示困難】【退院先探索と調整のための時間消費】【入院を長期化させないアプローチ方法の未整備】【家族との退院をめぐるトラブル回避】【居心地のよい病院環境】【鈴木期ケースの退院支援対象からの除外】という6つのカテゴリーが,実施している退院支援の内容として,《退院目標の把握》《適切な退院先の早期探索》《チームアプローチによる適切な退院支援の確保・促進》《医師と患者・家族とのコミュニケーション促進》《病院への依存から自立への促し》という5つのカテゴリーがあげられた。高齢者専門急性期病棟の退院支援の課題として,(1)家族の思いの変化を予測した退院支援を考えていくこと,(2)現在行っている退院支援について看護師たちの経験を集約すること,(3)医療者のコミュニケーション能力を育成すること,(4)終末期にある高齢患者に対し,QOLも含めていかに対応していくかを考えていくこと,(5)病状予測や退院目標設定が困難な患者への退院支援について考えていくこと,が考えられた。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.130-135, 2006-03

本稿では,高等養護学校でおこった2人の少年の思いがけない変化を描いた山田洋次監督の映画「学校II」をとりあげ,何が2人の少年を変えたのか,そこに教師の働きかけ・教育はどう関与していたのかを教育心理学の観点から分析し,それに基づいて大人は子供にどのようにかかわったらいいのかについての考察を行った。教師の熱心な働きかけによっても変わらなかった2人の少年が立ち直った要因として,1)教師ではなく仲間からの思いがけない働きかけ 2)少年たちの気持を理解しようとし,共感的にかかわる教師の対応 3)自分にも何かができるということの経験,4)教師による学習や自己統制への指導,が抽出された。以上の分析に基づき,子どもの発達的変化を促すものとして,大人との暖かく支持的な関係,親密な仲間や様々な他者との交流(子どもが他者をケアするような関係も含めて)が重要であり,そこで受容感や自分が有効性をもち必要とされている存在なのだという自己効力感を経験することが子どもを変えることが指摘され,更に子どもの能動性・自発性にもとづく教育だけでなく,時には大人が主導的にやらせて子どもに基本的な力をもたせて,自発的にやろうとした時にできるように準備を整えておくことの必要性が論じられた。
著者
菱田 一恵 藤田 淳子
出版者
学校法人 順天堂大学医療看護学部
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-18, 2023 (Released:2023-10-26)
参考文献数
12

退院支援看護師が、看取り・医療処置導入以外の事例に対して、訪問看護導入を判断する要因を明らかにすることを目的として、退院支援看護師7名に対し訪問看護の導入を判断した事例の状況と判断の過程に関する半構成的インタビューを行い、質的帰納的に分析した。その結果、看取り・医療処置導入以外の事例において、退院支援看護師が訪問看護導入を判断する要因として、【患者・家族の不安】【医療的視点での介入の必要性】【家族支援の必要性】【将来予測される病状・成長発達・療養上の課題】【疾患や患者・家族の状況に応じたタイミング】【病状変化の早期発見と適切な支援へつなぐ必要性】【患者・家族の関係や生活の把握困難】の7カテゴリーが抽出された。退院支援看護師は、療養者・家族の生活全体をとらえながら訪問看護の必要性を判断し、疾患の特徴をふまえた今後の長期的な予測の中で訪問看護導入の時期やタイミングを見極めていた。今後さらに複数の疾患を持ち療養の場を移行する患者の増加が考えられ、訪問看護導入のタイミングを考慮すべき疾患や疾患ごとの訪問看護導入のタイミングをより明確にしていく必要があることが示唆された。
著者
小川 妙子 湯浅 美千代 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-72, 2006-03
被引用文献数
1

高齢者専門病院における長期入院患者の入院長期化の要因を患者,家族,医療,看護要因の4つの視点から事例分析し,看護職者の退院支援の課題を検討した。首都圏の高齢者専門病院の4つの一般病棟に21日以上入院し,研究協力に承諾した33名を対象とした。文献検討により35項目の調査票を自作し,約2ヵ月の調査期間に看護記録と診療記録から患者,家族,看護,医療に関する要因のデータを収集した。その結果,入院長期化の患者要因では,転倒リスクが高く介護認定を受けていない人が過半数であった。家族要因では,約半数が退院意向が不明であった。看護要因では,退院カンファレンスや家族指導の情報記載が少なかった。医療要因ではリハビリテーションの継続が最も多く,医師からの退院理由,時期,退院先の説明に関する記録は20%の事例に限定されていた。要因間の関連から検討した入院長期化のタイプは,【I.家族要因脆弱】【II.要因間調整円滑】【III.退院予測不明医療優先】【IV.医療・家族意向未調整】【V.療養環境退院阻害】の5つが明らかになった。看護職者は,患者の入院長期化の各要因の問題に応じて適切な退院支援をする必要があることが示唆された。
著者
小泉 仁子 太田 奈美 宮本 眞巳
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.64-71, 2008-03

《目的》本研究では,助産実習における体験を明らかにし,助産師としての職業アイデンティティ形成を促す実習のあり方を検討するための根拠となる資料を得ることを目的とした。《方法》関東地方の4年制大学で助産選択をし,助産実習を行った学生のうち,本研究の趣旨を説明し協力の同意が得られた8名を対象とし,半構成的面接とフェイスシートとしての質問紙調査を実施した。実習中の体験に焦点を当てて検討するため,学生の抱いた感情に注目し分析を行った。《倫理的配慮》順天堂大学医療看護学部研究等倫理委員会の承認を得た。《結果》1.助産師の志望動機は,【肯定的感情】と【なりたい自分】という2つのカテゴリーにまとめられた。2.助産実習の体験に焦点を当てて検討するため,学生の抱いた感情に注目し分析を行い,1)否定的感情を伴う体験は,【助産実習の現実についていけないという思い】と【助産実習を乗り越えられないかもしれないという思い】という2つのカテゴリーを抽出した。2)肯定的感情を伴う体験は,【助産実習を支えてもらっている思い】と【助産師としてやっていこうという思い】という2つのカテゴリーを抽出した。《まとめ》助産師としての職業アイデンティティは,体験と共に形成されていくこと,否定的感情を伴う体験も適切な支援で肯定的感情に転化すること,リアリティショックの強弱とその立ち直りの過程に助産師としての職業アイデンティティ形成のポイントがあることが示唆された。
著者
初鹿 静江
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.22-28, 2007-03
被引用文献数
2

2006年4月に改正された介護保険制度では,認知症高齢者グループホームが提供するサービスの中に介護予防サービスが含まれた。これにより,グループホームは,認知症の要介護状態の予防に尽力することが期待されている。認知症の要介護度の悪化予防という点では,ここ数年,食事支援が認知症症状を緩和するという報告が出ていることから,東京都内で,食べ物の希望の尊重を含めた食事支援に力を入れるグループホームが漸増している。本研究では,調査者がグループホームを訪問し,実際に行われている食事支援を観察し,健康維持に重要な食事の内容を含めた認知症高齢者の食事作り行為や言動,情緒等の観察結果から,食生活支援が認知症の症状の緩和・安定にどのように寄与しているかを分析した。結果は,軽症の認知症高齢者には,食事支援行為が症状緩和・安定に有効な場合が多いこと,進行した認知症では,少数の介護者では希望を尊重した適切な食生活支援ができず,精神状態を不安定にさせている恐れがあること等が明確となった。加えて,希望重視の食生活支援は栄養確保の面で問題があり,グループホームの食生活支援は,精神面および栄養面にも配慮する必要性を言及した。
著者
樋口 キエ子 原田 静香 カーン 洋子 山口 和枝 金子 裕子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-49, 2008-03
被引用文献数
1

退院後の患者・家族の退院支援への要望・意見から退院支援のあり方を検討することを目的とした。方法は,地域特定機能大学付属病院に入院し,退院支援部署で指導を受けた患者家族の「退院支援への要望・意見」の記述データを分析した。その結果,患者家族が希望する退院支援は,【対象者の意思を尊重した退院準備】【療養継続に向けたケアの計画的指導】【退院後の生活を見据えた社会資源の紹介】【対象者にわかる連携体制】【対象者に伝わる診療看護体制】の5コアカテゴリーとそれを構成する内容が明らかになった。特にケアの継続に向けた指導の要望が最も多く,対象特性は高齢者夫婦や医療ニーズが高い療誉者が多い結果から,退院支援の開始時期,患者・家族にわかる退院支援システムづくり,関係者間のチームケアの必要性が示唆された。患者・家族の求める継続ケアの実現には,退院後の生活を見据えた退院支援体制づくりが求められる。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.102-108, 2007-03

本研究の目的は,「生産性」に関して逆方向の発達課題を担っている児童期と老年期にある者が交流をもつことによりもたらされるものについて,発達心理学の観点から考察を行うことである。考察の対象としたのは,偶然交流をもつようになった孤独な老人と寂しさや問題をもつ少年が,交流を通して独特な形で支え合い,老人の死後も少年の心を支え続けるようになる過程を描いた2つの小説,「博士が愛した数式」と「夏の庭」である。なぜそのようなことが可能になったのかの分析を行い,1)老人のもつ能力や特質が少年達の発達課題の取り組みに合っていて,そのサポートができたこと,2)少年たちは他の大人から道具的・情緒的サポートを受けたり,存在を認めてもらうことが少ない少年だったという2つの要因が抽出され,そのことが双方が相手の「役に立っている」という気持や,自分が相手から必要とされ大切にされているという気持をもたらし,Eriksonの相互性が成立したことが示された。老人と少年との間にこのような交流がいつもおこるわけではなく,老人の状況,少年側の状況,交流の中味,それらの条件が整った時のみに,相互性の体験がもたれることが論じられた。
著者
水野 基樹 田中 純夫 臺 有桂 北村 薫
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.29-37, 2006-03

近年,思春期教育に対する取り組みが,学校での自己完結的な活動から保健所との協働による有機的な連携へとシフトしてきている。地域社会における関係機関が連携を図り,各々の役割や機能を明確化することで,家庭教育の支援や思春期に噴出する性の問題等への健全育成活動に資するシステムの構築が望まれているのである。本稿では,地域保健システムへの取り組み,とりわけピアエデュケーター養成セミナーを事例として取り上げ,セミナー運営の仕組みを境界としてではなくシステムとして組織を把握するという観点から組織論的に検討を加える。加えて,ピアエデュケーター(大学生)がコーディネートしたピアグループ活動に参加した中学生を対象にして,自己肯定意識尺度を用いた質問紙調査を実施して,思春期教育への介入成果を測定した。結果は,「対自己領域」の項目において,全国平均データよりも明らかに上回っていた。また,ピアエデュケーターに対する自由記述による質問紙調査からも,ピアグループ活動を支持する意見が多く聞かれた。よって今後は,地域保健システム構築のための手段として,ピアエデュケーター養成セミナーの充実を図ることが重要である。各分野の専門家が有機的に協働システムを構築して,組織の境界を超えた思春期教育を展開する必要があると考えられる。地域社会と学校教育機関が主体となった新たな協働の場の創出が求められているのである。
著者
杉山 智子 松井 典子 深堀 浩樹 須貝 佑一
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-9, 2008-03

本研究は,アルツハイマー型中期認知症患者にADLケアを行うときに生じる抵抗に際した望ましい認知症ケアのあり方を検討することを目的とした。老人病院認知症病棟に入院中の自立歩行可能なアルツハイマー型中期認知症患者7名とケアスタッフ20名を対象に患者1人あたり各40時間の参加観察法を実施した。ケア開始時に抵抗がみられた場面のうちケアの完了時に患者の笑顔が伴った場面のケアを「満足できたケア」,伴わなかった場面のケアを「満足できなかったケア」,ケアが完了できなかった場面のケアを「中断したケア」とし,声かけ,ケア所要人数ならびに時間について,統計学的分析を行い,それぞれのケアの特徴を検討した。各ケアとケア所要時間との関連では,排泄,身支度,食事で「満足できたケア」は「満足できなかったケア」よりもケア達成までの時間が有意に長かった。また声かけとの関連では,「満足できたケア」の方が「満足できなかったケア」よりも,ケア中の日常会話が有意に多く観察された。ケア抵抗時におけるかかわりにおいて,時間をかけ,日常会話を取り入れてケアを行うことで患者が満足できる,すなわち望ましいケアの実現に結びつくと考えられた。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.95-101, 2008-03

本研究の目的は,劣悪な環境に長期間置かれて育ってきたにもかかわらず,それにめげずに立ち直った青年について,立ち直りを可能にした外的・内的要因を発達心理学の観点から検討することである。実母から苛酷な虐待を長期間受けながら立ち直ったDave Pelzer氏(「"it"と呼ばれた子」の著者)が書いた5冊の著書を用いて,なぜ彼が立ち直れたのか,何がそれを可能にしたのかについて分析を行った。その結果,まわりからのサポートを得られたこと,本人が心理的強さや肯定的な志向等のresilienceをもっていたこと,そしてサポートや状況要因と本人のもつ逆境に耐えうる資質がうまくかみ合って,マイナス要因を補強しプラス方向に導いたことが示された。また自分の経験を振り返り著書にまとめたり講演をする中で,sense of coherenceをもつようになっていった可能性も示された。更に彼がもつ強さの源はどこにあるのかについても検討を行い,生得的なものもあると同時に虐待を受ける前の幼少期の経験が関連していること,Eriksonの第1,第2段階の発達課題をしっかり達成していたことが強さを培い,その後の劣悪な状況をくぐり抜けさせたことが示唆された。
著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 内村 順子 本田 淳子 武井 テル
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.50-57, 2007-03

本研究は,入院期間の短縮化が図られている高齢者専門病院の認知症専門病棟での入院長期化の要因と退院支援の内容を看護師の視点から明らかにすることである。老人性認知症疾患治療病棟2病棟及び身体合併症対応精神科病棟1病棟の師長,主任,リーダー業務を行うスタッフ計9名を3名3グループとしたグループインタビューを実施し,質的に分析した。インタビュー対象者が認識していた入院長期化の要因は,【治療に伴う退院目標の遷延】【退院先探索・決定,待機のための時間消費】【家族の退院受容困難】【入院を長期化させないアプローチの未整備】という4つのカテゴリーにまとめられた。また,インタビュー対象者からあげられた退院支援の内容は,【退院できる状態にむけての患者のケアと治療の調整】【退院を促進するための他職種との連携】【チームでのアプローチ】【家族との連携を通した退院準備】【看護職間の連携と教育】【退院を念頭にした調整】【家族のパワーを保つ支援】という7つのカテゴリーにまとめられた。今後の退院支援の課題として,患者自身へのアブローチの充実,家族に生じうる心情を予測した入院・治療計画,退院後の治療継続のシステム,認知症高齢者への治療選択を検討するシステムがあげられた。