- 著者
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田邉 美佐子
神田 清子
- 出版者
- 高崎健康福祉大学
- 雑誌
- 高崎健康福祉大学紀要 (ISSN:13472259)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.13-23, 2008-03
本研究の目的は、発症後5年を経過した小児がんの子どもを持つ父親Aさんの語りから、Aさんの子どもとの闘病体験の意味を理解することである。研究方法は、面接によって語られた内容を逐語録にした後、当事者の視点からストーリーを記述し、Aさんに起こっている出来事の意味を解釈した。子どもの入院中、Aさんは家族の一体感を感じ、家族の生活を守ることを自らの主たる役割に据えて、主体的に生活調整を図り、子どもとの闘病体制を確立していた。退院後においては、治療に最善を尽くしたと納得することで、悪い事態への受け入れ準備をし、不確かな未来を案ずるのではなく、今を生きる子どもとの生活を大切にしていた。Aさんが小児がんの子どもとともに過ごした闘病体験は、辛いことのみでなく自己を成長させる意味のある体験として位置づけられていた。この価値観の獲得には、家族との一体化が大きな要因であり、看護支援の骨格には家族調整が重要であることが示唆された。