著者
田邉 美佐子 吉田 久美子 黒澤 やよい 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-30, 2009

<B>【目 的】</B> 小児期に骨髄ドナーになったきょうだいの経験を記述し, 小児ドナー経験者への看護支援を検討する. <B>【対象と方法】</B> 8歳の時に6歳の妹に骨髄提供をした20代前半の女性A氏に面接を行い, 質的記述的に分析した. <B>【結 果】</B> A氏は骨髄提供について, 躊躇する気持ちや親の期待を感じながらも, 自分の意思で決めたと認識していた. 骨髄提供後は, 妹との一体感を感じるようになり, 妹を見守ってきた. 現在は, ドナーになってよかった, 自慢できることだと捉えていた. <B>【結 語】</B> 小児ドナー経験者は, 現在の状況からドナーになった理由を捉え直すこと, レシピエントのQOLが自己価値観に影響を及ぼすことが示唆された. 思春期・青年期に歪んだ自己存在が認知されないよう, 継続した直接的支援とレシピエントを介した間接的支援の必要性が考えられた.
著者
黒澤 やよい 田邉 美佐子 神田 清子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-12, 2010 (Released:2017-01-13)
参考文献数
21
被引用文献数
2

要 旨本研究の目的は,子宮全摘出術を受けたがん患者が術後,いかに性的自己価値の認識を行い配偶者との関係を再構築してきたのか,辿ってきた心理的プロセスを明らかにし看護支援の検討を行うことである.半構成的面接法により対象者9名からデータ収集を行い,修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を参考に質的帰納的分析を行った.子宮全摘出術を受けたがん患者は,【性的関係性の構築体験】と【配偶者との親密性の強化体験】を関連させ,配偶者との関係性を再構築している.【性的関係性の構築体験】においては〔性的自己価値観の動揺〕と〔性的自己価値喪失感の克服〕を体験している.動揺体験では,<性的自己価値の喪失感>,<性的変化の現状認識>,<性交による創部刺激への不安>,<性の情報取得へのためらい>,<配偶者の性的欲求の尊重>,<性交許可で自覚するジレンマ>を生じている.克服体験では,自己価値を再認識する過程において,性生活の実施を巡り3通りの体験があった.1つ目は,性交を避けては通れない大切なことと捉え<性交時の苦痛軽減への努力>を行い<性的自己価値の再認識>を持つ経験,2つ目は,性交があってもなくても関係は変わらないと<性的価値にとらわれない自己価値の再認識>を持つ体験,3つ目は性交を持つ気になれず<性生活回避への自責>から,<性生活を持たないことへの苦渋の意味づけ>を行い,<性的価値にとらわれない自己価値の再認識>に至る体験である.【配偶者との親密性の強化体験】においては,〔配偶者の理解と支え〕を受けると同時に,自身も〔配偶者への気遣い〕を行い,連帯感を深めている.看護支援においては,子宮摘出術を受けるがん患者が術後に経験する心理的背景を理解し,配偶者との関係が円滑に再構築できるようシステムを整え,情報の提供と心理的支援を行う重要性が示唆された.
著者
田邉 美佐子 神田 清子
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
高崎健康福祉大学紀要 (ISSN:13472259)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-23, 2008-03

本研究の目的は、発症後5年を経過した小児がんの子どもを持つ父親Aさんの語りから、Aさんの子どもとの闘病体験の意味を理解することである。研究方法は、面接によって語られた内容を逐語録にした後、当事者の視点からストーリーを記述し、Aさんに起こっている出来事の意味を解釈した。子どもの入院中、Aさんは家族の一体感を感じ、家族の生活を守ることを自らの主たる役割に据えて、主体的に生活調整を図り、子どもとの闘病体制を確立していた。退院後においては、治療に最善を尽くしたと納得することで、悪い事態への受け入れ準備をし、不確かな未来を案ずるのではなく、今を生きる子どもとの生活を大切にしていた。Aさんが小児がんの子どもとともに過ごした闘病体験は、辛いことのみでなく自己を成長させる意味のある体験として位置づけられていた。この価値観の獲得には、家族との一体化が大きな要因であり、看護支援の骨格には家族調整が重要であることが示唆された。