- 著者
-
北澤 恒人
- 出版者
- 大東文化大学
- 雑誌
- 大東文化大学紀要. 人文科学 (ISSN:03861082)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.A167-A177, 2008-03
シェリングはフィヒテとの往復書簡の中で、有限者の視点に立つフィヒテの初期知識学の構想が1800年以後、個体と絶対者とを総合しようとするものへ転換してゆくことを取りあげ、この企てが主観性の立場にとどまるために挫折せざるをえないと主張する。シェリングがこのような判断を下したのは、彼がすでにその『超越論的観念論の体系』の中で、自由から出発する実践哲学の最高の立場が歴史における自由と必然性との相克にとどまるということを考察していたからである。シェリングは『体系』においてこの実践哲学の矛盾の解決として美的直観を導入し、フィヒテの課題に対する解決可能性を示すものとして芸術作品を位置づけた。