- 著者
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宮田 彬
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.1-5, 2005-01-01
ツリフネソウトラガSarbanissa yunnanaの発見を報告した論文(宮田・野崎,1989)で,ノブドウにつく謎の幼虫について言及し,おそらくそれがベニモントラガSarbanissa venuataの幼虫であろうと述べた.その後,長い間調べる機会が無かったが,大分県九重町地蔵原に移って間もなく2003年9月27日再びノブドウにつく幼虫を発見した.前2回の遭遇では幼虫は茎に70頭から100頭の大きな群れを作っていた.しかし今回は1本のノブドウに12-19頭からなる小さな4つの群れが見つかった.群れにはリーダーがおり,敵を威嚇するときはリーダーが頭を上にそらせ体を震動させると,メンバーが一斉に同じ行動を行った.また摂食の際,群れは解散したが,終わると元の葉に戻ってまったく前と同じように並んだ.地蔵原は海抜約830mの高原で涼しいためか低地では二度も失敗した幼虫飼育は順調で,数日でクヌギの朽ち木に潜り込み蛹化した.2004年8月10日から15日にかけてベニモントラガ2♂1♀が羽化した.ツリフネソウトラガもベニモントラガも地蔵原には多いので,両種の成虫の発生期を調べた.その結果,ベニモントラガは年1回8月に出現する一化性の種であるが,ツリフネソウトラガは初夏と夏の年2化であることがはっきりした.