- 著者
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熊谷 良雄
田原 裕規子
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.6, pp.327-336, 1996-11
1.研究の目的 1994年1月17日未明に、アメリカのロス・アンジェルス市北部を震源とするノースリッジ地震が発生し、一年後の同日ほぼ同時刻に「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」が発生した。被害の程度には大きな差があるが、両地震とも、都市機能、市民生活、経済活動、人々の心理に大きな影響をもたらした都市直下型の大地震だった。一般に、日本は施殴面での災害予防に重点がおかれ、アメリカでは管理運用面での緊急対応に重点をおいて、災害管理がなされているといわれている。そこで本研究では、地震後約3ケ月間に両被災地で、どのような緊急事態管理がなされたか、神戸市とL.A.市の対応を中心に比較し、両国における特徴を分析し、日本の緊急事態管理の向上に資することを本研究の目的とした。 2.研究の方法 主として、阪神・淡路大震災における神戸市広報課が報道機関に伝達するために災害対策本部に貼り出した資料と、ノースリッジ地震における定期的な記者会見の際に配付された資料である"Northridge Earthquake Directers' Briefing Report"を対象として、発災後約3ヵ月間の緊急対応の内容等を時系列的に比較した。緊急対応は、初動,情報収集,広報,交通対策,高齢者等への対応,被災児童への対応,市議会の対応、および、被災者対応に分類した。 3.研究の結論 日米両国の社会情勢等の相違を加味しても、ノースリッジ地震後の緊急対応の素速さには我が国も見習う点が多々ある。それらは、被害状況の早期把握に帰結できる。すなわち、(1)上空で常に警備にあたっているヘリコプターには地震時に被害状況をチェックすべき施設等のリストが用意されていたこと、(2)被害を把握すべき重要施設が事前に指定されていたこと、(3)地上からの被害概況把握のための体制が整えられていたこと等々であり、このような事前準備が発震後約2時間半で被災地近傍に現地対策本部を開設したことにつながっている。さらに、その後の復旧対策には、地震後約2週間で被災建築物の応急危険度判定結果をGIS:地理情報システムによって図示し、かつ、その情報を緊急対応機関が自由にアクセスできること等が大きく貢献した。また、災害申請センターの被災地域での展開,迅速な被災者向けマニュアルの作成・配付、および、物的なものから非物的までをカヴァーしている多面的な被災者救済策等は、我が国でも早急に導入を因っていくべき対応策である。