著者
杉浦 正美 山崎 文雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.147-154, 1996-11

兵庫県宝塚市は、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震の被災中心地の中では最も西方に位置しているが、犠牲者106名を出し、全壊3,800棟,半壊8,881棟(いずれも被災証明発行に基づく数字)の大きな被害を受けた。筆者らは、震災直後より宝塚市が実施した被害建物の全数調査の結果を用いて、被害データベースを構築した。本報告では、建物被害の概要を建物構造や建築年などの観点から整理するとともに、建物被害の地理的分布の特徴を考察した。上記の検討結果より、本震災における宝塚市の建物被害について、以下のことが明らかとなった。[建物構造](1)木質系プレハプ構造の被害は木造建物に比べ、明らかに少ない。 (2)非木造系ではRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む),S-P(鉄骨造プレハプ),軽量S-P(軽量鉄骨造プレハプ)の全半壊率が20%前後なのに比べ、S造(鉄骨造),軽量S造全半壊率はその約倍の40%程度である。[建築年代](1)いずれの構造でも、建築年代が古いほど被害率が高くなる傾向を示す。 (2)木造系の建物は、建築年代による無被害率に大きな変化はないが、非木造系では、建築年代が新しいほど無被害率が増加する傾向がある。[被害分布]建物の建築年代による被害率の地域分布は、建築年が古い建物ほど、被害率が高い傾向が出ている。特に、阪急宝塚線とJR福知山線に沿って東西方向の連続した被害地域は、建築年や構造に関わらず周辺に比べ、被害が集中する傾向が認められる。また、建物被害と地形条件及び活断層位置の関係を見たところ、被害率の高い地域は、一部地域を除き、山麓の中小規模の扇状地面に分布する傾向にある。さらに、活断層との関係では、本地域を東西に横断する有馬-高槻構造線と被害率の商い地域が、一定距離を置きながらも平行して分布している特徴を示している。

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