- 著者
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山崎 文雄
副島 紀代
目黒 公郎
片山 恒雄
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.171-179, 1994-08
都市社会の電力依存の高まりとともに,停電によって都市社会が受ける障害の形態も変化しつつある.1991年の台風19号の際には,全国で700万件もの停電が発生し,構造的被害よりも停電によるライフラインの機能損失・機能的被害波及が大きな問題となった.停電による都市生活への影響は,その地域に住む人々の生活様式や産業形態によって大きく異なり,しかも季節・天候などの自然条件と,停電の発生時刻・継続時間などの影響を強く受ける.これは地域別の電力需要特性が,上記のような様々な要因で決定されるためである.したがって本研究では,都市停電の定量的影響度評価への第1ステップとして,電力需要特性から都市部の地域特性の評価を試みた.東京23区を例としてとりあげ,電力需要と地域特性のデータベースを構築するとともに,電力需要から見た都市部の地域特性評価と分類を行った.その結果,都市の電力需要量は地域や時刻,季節などにより様々に変化するが,配電エリア別に見るとその電力消費曲線の特徴により,住宅・オフィス・工場・店舗/飲食店がそれぞれ卓越する,4通りの地域に分類できることがわかった.そしてどのエリアの電力需要も,この4つの構成要素の重ね合わせとして表現できると仮定し,各構成要素の1件当たりの電力需要曲線を回帰分析によって求めた.さらに地域特性と電力需要特性を関連づけるために,寄与率という概念を用いて,そのエリア全体の電力需要量に占める各構成要素の電力需要の割合を求めた.その結果を地図上に示すと,電力需要から求められた,住宅地・オフィス街・工場地帯・繁華街,またこれらの混合地域が,実際とよく一致し,電力の寄与率を用いて地域特性を評価できることが示された.