著者
稲谷 ふみ枝 津田 彰
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.5, pp.81-90, 2006

本研究の目的は,高齢者デイケアにおける,老年期うつ病(回復期)の不眠や不安,抑うつ感情を主訴とする高齢女性に対するライフレビューを中心とする個人心理療法および施設で暮らすクライエントの環境調整の適用について,事例から検討するものである。利用者に対する心理アセスメント及び心理面接の経過を生涯発達的視点から分析し,高齢者施設における利用者のQOLを高める包括的アプローチの在り方を考察した。方法として(1)傾聴とライフレビュー,(2)薬物療法の自己管理に向けた支援を中心に,クライエントの不眠と不安状態の改善を目的とした弛緩法を取り入れ,(3)日常のなかでクライエントの心理的適応と活動性を向上させるための環境調整を行った。その結果,ライフレビューによる心理的変化として,高齢者の心理的安寧につながる家族(娘)との心の絆の再確認が示される一方,クライエントのうつ状態の背景となる心理的要因として「信仰と罪悪感」「居場所(心の安住)の模索と見捨てられ感」が示され,それらがクライエントの関係性を改善するためのポイントとなった。高齢者ケアの現場では,高齢者のこころの問題への接近のなかで統合的に関わることや,そのために他職種との連携をとること,さらにクライエントの心理的適応を促すための環境調整を図るなどの包括的心理的援助の重要性が示された。

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高齢者デイケアにおける包括的心理的援助 : 老年期うつ病(回復期)の利用者に対する心理面接の事例http://t.co/EDIJBm7v
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