- 著者
-
堀籠 崇
- 出版者
- 日本医療経済学会
- 雑誌
- 日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.1-25, 2009
- 参考文献数
- 77
本稿では、現在日本の医療提供システムに関して、占領期医療制度改革においてGHQの及ぼした影響が大であったという立場から、とりわけ戦後の医療提供体制における公私ミックスのあり方についてのGHQの考えと、それを受けた日本政府の方針選択に焦点を当てて、歴史的な検討を試みた。GHQは公私ミックスに影響を及ぼす直接的な、医療機関の整備・普及策は指示しなかったものの、米国調査団を招聘し、政策方針を決定する際に基礎となり得る考えを提示した。GHQは日本政府の政策方針選択の際、表面上ニュートラルな立場をとったものの、それは本意ではなかった。GHQはその根本に「医師の独立性と医療政策における医師の指導的地位の確保」を医療政策理念として保持し、事業税問題における医師擁護、医薬分業の推進を進めた。一方日本政府はこうしたGHQの医療政策理念を受けつつ、これと合致する形で、日本国内の各種医療政策アクターの利害調整を行った。その結果、戦後当初日本政府が選択した公(特に国)主導の医療提供体制は、質的転換を遂げることとなったのである。