著者
植野 真臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.40-51, 2007-01-01
参考文献数
17
被引用文献数
8

本論文では,eラーニングコンテンツに対する学習所要時間データを用い,オンラインで学習者の異常学習プロセスを検知する手法を提案する.具体的には,学習所要時間データ系列{x_1,x_2,…,x_n}を所与として,新たなデータx_<n+1>の出現する確率分布をベイズ予測分布を用いて導き,新たなデータx_<n+1>の異質性を検定するというもので,以下のような利点をもっている.(1)数学的に導出された異常値検出モデルは,異常値検出のために必要とされるデータ数を理論的に反映しているために,判断材料となるデータが少ない時点では異常値検出の基準を緩め,データ数が増すに応じて基準を厳しくしていく特性をもつ.そのために,データ数が少ない時点で正常値を異常値と判断し,その後の検出に影響することを避けることができる.(2)過去の学習履歴データを用いて,各コンテンツの学習所要時間の平均,標準偏差を逐次計算し,それらを用いて学習者の各コンテンツへの学習時間データを標準化したデータ系列より,異常値検出を行うアルゴリズムを提案している.コンテンッ間で標準化されたデータを対象としたモデルを提案することにより,時系列データに対するコンテンツの特性(平均所要時間,標準偏差)の差の影響を除去できる.(3)事前分布のハイパパラメータを変化させることにより,異常値判定基準が様々な統計検定に変化し,状況に応じた検定法を選択することができる.更に,実際にこれらの原理を組み込んだLMS(Learning Management System)を開発し,本手法について,1.シミュレーション,2.学習者からの異常学習プロセスの自己申告との一致性評価を行い,その有効性を示す.

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