- 著者
-
横山 修一郎
- 出版者
- 国立音楽大学
- 雑誌
- 研究紀要 (ISSN:02885492)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, pp.37-46, 2009
ダンテ・アリギエーリは、『神曲』の「天国」第2歌において、月の表面にはなぜ斑状の模様(月の海)が見えるのか、という議論を展開する。そして、ダンテは、この「月の斑点」の理由説明をきっかけに、最終的には神から地上世界に至るまでの宇宙全体の組織図とその組織を動かすものが何か、ということを示す。ゆえに「天国」第2歌は、読者に論理的に思考することを求める言わば「学術的な」歌章であることは否定できないだろう。しかしながら、「天国」第2歌からは、知識という外在的な学術的要素と詩人ダンテの内在的な詩的発想とが、見事に調和する様を読み取れるのではないだろうか。