- 著者
-
猿田 佳那子
- 出版者
- 同志社女子大学
- 雑誌
- 総合文化研究所紀要 (ISSN:09100105)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.76-88, 2009-03-31
本報は、2002 年から現在までに筆者がおこなってきた事例研究のうち、入学式、卒業式、結婚式など「ハレ」の場にふさわしい服装を求めた被服構成をとりあげるものである。各事例について、障がいの概要を述べ、衣生活上の困難を整理し、実際に行った被服構成を述べ、当事者や家族などから得た情報をもとに車椅子使用者の社会活動を支援するための被服構成の特質を考察した。その結果、被服構成に必要な技術は、いわゆる健常者の衣服をとりあつかう場合と変わらないが、不都合な点や要望を聞き取り、それを被服構成に反映するにはいくつかの特異性が認められる。そこで、被服構成技術と衣生活環境の側面から留意点をまとめた。上半身着については座面以下の処理方法とアームホール寸法の拡大が重要であること、女性の下半身着については巻きスカート形式の特長が明らかになった。女性の「ハレ」着の定番である和装は、関節可動域が小さくなった人にも無理なく着用できる要素を持っている。本報にかかわる調査をとおして、衣服の持つ社会的な機能を実感し、「ハレ」の場にふさわしい服装の用意があるということが、各個人の尊厳にかかわることを再認識した。