著者
大村 敬一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.101-119, 2010-06-30

本稿では、極北の先住民であるカナダ・イヌイトの側からグローバリゼーションを考えることを通して、グローバリゼーションという歴史的現象の特質を明らかにし、その現象の中で人類学が果たすべき役割を考察する。そのために、本稿ではまず、ラトゥールが「近代」の問題を検討することで示したグローバルな環境の現状分析に基づいて、イヌイトが直面しているグローバルな環境の現状を整理する。そのうえで、イヌイトが闘ってきた先住民運動をグローバリゼーションという歴史的現象の中に位置づけることによって、その運動を通してイヌイトがグローバルな環境に対して何を守ろうとしているのかを明らかにする。そして、そのイヌイトの闘いを考察することによって、グローバリゼーションと呼ばれる歴史的現象によって引きおこされている問題の根底には、「文化」と「自然」に分離することのできない人間と非人間(モノ)の複合体を構築して維持する異なるシステムの相克があることを明らかにする。そのうえで、今日、求められているのは、「一つの自然」を基盤とする「文化相対主義」ではなく、多様な人間と非人間の複合体の間の「自然=文化相対主義」であり、真に共生すべきなのは「一つの自然」の上に築かれる様々な「文化」ではなく、多様なあり方で構築される人間と非人間の様々な複合体であることを示す。最後に、この「自然=文化相対主義」において人類学が果たす役割について考える。

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[オートポイエーシス][文化人類学][グローバリゼーション][文化相対主義] 読んでる。

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