- 著者
-
村中 孝司
鷲谷 いづみ
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.2, pp.111-122, 2002-01-30
- 参考文献数
- 29
- 被引用文献数
-
23
利根川水系鬼怒川の中流域で1996年に植生調査を行った砂礫質河原のうち,丸石河原代表種が多く生育していた4ヵ所において,1999年および2000年にベルトトランセクト法により植物種の出現頻度と基質タイプを調べ,1996年のデータと比較した.4ヵ所のうち2ヵ所の河原の半安定帯において,カワラノギクやカワラニガナの丸石河原固有種の出現頻度の著しい減少が認められた.3ヵ所の河原においては,砂質の基質の顕著な増加が認められた.シナダレスズメガヤは砂質だけでなく中間および礫質の基質でも増加していた.1996年には100株以上からなるカワラノギクの局所個体群が4ヵ所確認されていたが,2001年には3ヵ所となり,そのうちの一ヵ所では,株数もほぼ10万株から110株へと著しく減少した.基質の変化とシナダレスズメガヤの侵入がカワラノギクやカワラニガナなどの河原固有植物の生育適地を減少させ,すぐにでも保全のための応急的対策が必要なほどに個体群の急激な衰退が起こっていることが示唆された.