- 著者
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五十嵐 真子
- 出版者
- 「宗教と社会」学会
- 雑誌
- 宗教と社会 (ISSN:13424726)
- 巻号頁・発行日
- no.10, pp.25-45, 2004-06-12
本論文は、佛光山を具体例に挙げながら、現在の台湾の仏教と社会との関係を分析するものである。佛光山は1967年に高雄県に開山され、台湾を代表する仏教聖地と言われている。壮麗な寺院や巨大な仏像に加え、博物館やギャラリー、宿泊施設なども有しており、単なる宗教施設というよりは、快適な観光地としての機能も兼ね備えている。また、台湾各地の施設では、多種多様な講座が提供され、社会教育活動が活発に行われている。さらに1998年と2002年には2つの仏舎利を迎えた。その際には、大規模な法会やパレードが挙行され、非常にアトラクティブなイベントとして演出されていた。これらは近年台湾において顕著になってきた文化観光や教養志向と呼応するものであり、宗教が信仰の対象だけでなく、教養や娯楽の対象としても注目されるようになってきたことを示している。しかし、そこで仏教が重要であり続けるのは、台湾の人々にとって佛光山が示す仏教が中国との文化的なつながりを示しており、そこに人々を引き付ける強い求心性を見ることができる。