- 著者
-
戸田 聡一郎
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理 (ISSN:13434063)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.1, pp.142-148, 2008
- 参考文献数
- 12
遷延性植物状態(PVS)はその診断基準の難しさと同時に患者とのコミュニケーションが困難であるという理由から、様々な倫理的問題を引き起こしてきた。しかし最近、植物状態と診断されたにもかかわらず、実は意識を持っている患者がいることを示唆する研究が報告された。本稿ではこの研究結果を検証し、実験で使用されたパラダイムが特に臨床応用において問題を表出させることを示す。さらにこの問題を解決させるための新たな実験パラダイムを提唱する。この新しいパラダイムは、将来患者とのコミュニケーションを図る方法を構築する上で重要な役割を担う可能性をも持つであろう。重要なのは、科学的に検証可能な問題が、科学のサイドからではなく、臨床倫理の側面から提起されるということである。この考察により、神経倫理学における新たな方法論が存在することが強く示唆される。