著者
山本 智子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.4-12, 2009
参考文献数
36

本稿は、包括的な子どもの権利保障を目的に、「国連子どもの権利委員会(UNCRC)」による「乳幼児の権利(GENERAL COMMENT No.7(2005)Implementing child rights in early childhood)」との関係において、日本の小児医療にInformed Assent(I.A.)を採用するにあたっての課題を提示した。I.A.は、「親の許諾(Parental Permission)」と「患児の賛同(Patient Assent)」という小児医療に特有の2概念から成る。具体的な適用例では、乳幼児は、「親の許諾」のみの適用を奨励されている。さらに、アメリカ合衆国の小児科医によって提示されたI.A.理念には、「子どもの患者の権利」とも「適切なケアの提供」とも異質な、また、法的責任にも対応していない、「医師と親との責任のシェア」(Decision-making involving the health care of young patients should flow from responsibility shared by physicians and parents.)という記述が盛り込まれている。一方、UNCRCによる「乳幼児の権利」は、乳幼児を「社会的主体(Social Actor)」とし、また、乳幼児期を「子どもが条約において保障されたすべての権利を認識する重要な時代」と位置づけている。さらに、乳幼児の力を肯定的に評価すると共に、能力の未熟さ故の乳幼児の権利制限を問題視し、乳幼児の権利の保障を強く求めている。I.A.の採用にあたっては、「子どもの権利」の視点や、臨床経験(実践知)や研究成果に基づいた小児科医による乳幼児の力の評価やその力の独自性を指摘する見解もふまえ、乳幼児観の転換や、乳幼児の未熟さを子どもの権利の支援要素へと転換することが課題になる。また、医療専門職が提示する医療に係る理念の影響についても検討を要する。

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