著者
小出 泰士
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.29-36, 2009-09-22

フランスでは、2004年の生命倫理法改正に際して、着床前診断の適応が拡張された。それにより、ファンコニ病の第一子を治療するために、着床前診断技術を用いて、第一子とHLA型の適合する第二子を出産することが、法律で容認された。患者を治療するために他者の身体を利用することの哲学的根拠を考えるなら、一方で、連帯性の原則に則って、病気の患者を救うことは社会の義務である。しかし他方で、自律の原則に則って、そのために身体の一部を提供することは、あくまで提供者本人の自発的な意思によるのでなければならない。ところが、まだ意思はおろか存在すらない第二子に、第一子の治療の手段となることを要請することは、連帯性の行き過ぎではないだろうか。連帯性よりもむしろ、第二子の尊厳、統合性、傷つきやすさへの配慮を優先すべきではなかろうか。

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