著者
小出 泰士
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.33-40, 2009-10-01 (Released:2018-02-01)

As technology advances, a wider range of applications is being found for human body parts. For ethical reasons, it is urgent that we protect human beings from being harmed by these new technologies. However, in today's liberal society, based on respect for autonomy, one may be permitted to dispose freely of one's own body if one does no harm to others, or make use of human beings who are not autonomous in order to treat other patients. It is: (1) one's own body, (2) parts and products of a human body, (3) an embryo, fetus and dead body, that are protected by human dignity, not by respect for autonomy. In order to protect human beings from being harmed by the new technologies, we need a word equivalent to 'human dignity.' Thus by examining the effectiveness of the principle of human dignity in society, we will clarify the real intention of the French ideas on bioethics, which consider human dignity a fundamental spirit.
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 浅見 昇吾 甲斐 克則 香川 知晶 忽那 敬三 久保田 顕二 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 品川 哲彦 本田 まり 松田 純 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

終末期の意思決定に関する法制度・ガイドライン等を批判的に検討した結果、以下のことが明らかとなった。①医師ー患者関係に信頼性があり、透明性が担保されていれば、すべり坂の仮説はおこらないこと、②緩和ケアと安楽死は、相互に排他的なものではなくて、よき生の終結ケアの不可欠の要素であること、③それにもかかわらず、「すべり坂の仮説」を完全に払拭しえないのは、通常の医療である治療の差し控えや中止、緩和医療を施行するとき、患者の同意を医師が必ずしもとらないことにあること。したがって、通常の治療を含むすべての終末期ケアを透明にする仕組みの構築こそが『死の質の良さを』を保証する最上の道であると、我々は結論した。
著者
小出 泰士
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.29-36, 2009-09-22

フランスでは、2004年の生命倫理法改正に際して、着床前診断の適応が拡張された。それにより、ファンコニ病の第一子を治療するために、着床前診断技術を用いて、第一子とHLA型の適合する第二子を出産することが、法律で容認された。患者を治療するために他者の身体を利用することの哲学的根拠を考えるなら、一方で、連帯性の原則に則って、病気の患者を救うことは社会の義務である。しかし他方で、自律の原則に則って、そのために身体の一部を提供することは、あくまで提供者本人の自発的な意思によるのでなければならない。ところが、まだ意思はおろか存在すらない第二子に、第一子の治療の手段となることを要請することは、連帯性の行き過ぎではないだろうか。連帯性よりもむしろ、第二子の尊厳、統合性、傷つきやすさへの配慮を優先すべきではなかろうか。
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 磯部 哲 今井 道夫 香川 知晶 忽那 敬三 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 坂井 昭宏 品川 哲彦 松田 純 山内 廣隆 山本 達 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

1)20世紀に外延的に同値された神学的-哲学的概念としての「尊厳」と政治的概念としての「権利」は内包的に同一ではないということ。また、「価値」は比較考量可能であるのに対し、「尊厳」は比較考量不可であるということ。2)倫理的に中立であるとされたiPS細胞研究も結局は共犯可能性を逃れ得ないこと、学際的学問としてのバイオエシックスは、生命技術を押し進める装置でしかなかったということ。3)20世紀末に登場した「身体の倫理」と「生-資本主義」の精神の間には何らかの選択的親和関係があるということ。