著者
松崎 昇
出版者
上武大学
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-21, 2010-12

わが国は1990 年代以降、長期にわたって資産デフレの状態にある。また経済成長率も、既に70年代以降低下していたのであるが、90 年代以降もう一段低落してしまった。(超)長期にわたる停滞である。都合、現在の日本経済は〈資産デフレと停滞〉という二重の長期低迷状態にあることになる。前稿(「現代日本経済における長期資産デフレについて」上武大学経営情報学部紀要第33 号)でこのうち資産デフレ問題を扱ったので、本稿では停滞問題を扱うとともに、両問題を政策論において統合しよう。まずは停滞から脱却するため、〈弱者保護主義からの脱却〉を旨として、成長促進政策を大胆に採らなければならない。特に第1・3 次産業界に対する保護解除・規制緩和・競争促進政策、およびそれを前提とした両業界各事業当事者における利益率向上競争を通じた生産性向上競争が、経済成長への鍵となるであろう。ついで資産デフレ対策と停滞対策との統合、すなわち〈割当・順序〉問題であるが、割当としては、資産デフレ問題には資産リフレ政策を、停滞問題には成長促進政策を、ということになる。そして順序としては、資産リフレ政策がさきで、成長促進政策はそのあと、ということになる。需要刺激的なマクロ経済政策を成功裏に実施したのち、それを維持しつつさらに供給刺激的なミクロ経済政策も並行実施する関係にあるわけである。そして両政策はいわば序盤と本番、前座と真打の関係にある。すなわち現代の先進国経済にあっては、後者たる成長促進政策こそが経済政策の本命となる。〈まずは資産デフレから脱却するために資産リフレ政策を、そして資産デフレから脱却したら同政策と併行して、停滞から脱却するために成長促進政策を〉、これがわが国の当面の、および爾後の標準的な経済政策となるべきであろう。

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こんな論文どうですか? 現代日本経済における長期停滞について(松崎 昇),2010 https://t.co/fXD6cr73n7 わが国は1990年代以降、長期にわたって資産デフレの状態にある。ま…
こんな論文どうですか? 現代日本経済における長期停滞について(松崎 昇),2010 https://t.co/fXD6cr73n7 わが国は1990 年代以降、長期にわたって資産デフレの状態にある。…

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