著者
橋本 忠和
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 (ISSN:21854483)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-16, 2009

身近な環境を造形物で異化する美術の授業を行おうとした時、活動に同意しない児童が出てきた。これは、環境を異化する必然性が見いだせなかったことが原因と思われた。そこで、本論では、クリスト&ジャンクロードのザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性についての分析を手がかりに、児童が主体的に環境を異化する造形活動について考察する。近年、都市・地方を問わず、生活環境の中で造形活動を行う取り組みが盛んに行われている。そこでは、造形活動が環境を異化することで、身近な環境への気づきをもたらし、人間と環境が関わる意味を増幅して引き出していると思われる。しかしながら、ザ・ゲーツプロジェクトが実現に25年を要したように、環境を異化する造形活動は日常生活に制約や心理的不安を与える場合もあり、その活動を行う必然性について住民に説明して理解を得るのに、多くの時間と労力を必要とする場合がある。それは、児童が行う環境を異化する造形活動においても同様と思われる。すなわち、児童が身近な環境を異化する必然性を見いだすことができなければ、主体的な環境への働きかけは行われないと思われる。そこで、まず、「一貫性」、「分かりやすさ」、「複雑性」、「ミステリー」の4つの観点で、ザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性について分析した。そして、その分析を手がかりに児童が主体的に環境を異化するために、どのような要素で造形活動を構成すればよいのかについて考察した。さらに、その要素を生かした授業実践例の開発に取り組んだ。

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