著者
橋本 忠和
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.28, pp.307-320, 2007-03-31

本研究は,「道徳の時間」と「図画工作科」を組み合わせ,道徳教育において絵画表現による絵本づくりを行うことによって,道徳教育の内容を構成する視点の一つである「自己を他の人と関わりの中でとらえ,望ましい人間関係を育成する」ことに効果をもたらすことができるのか,授業実践を通して考察したものである。また,美術教育の面においても,自分と他者との関わりを意識した絵画表現をさせることで,児童に既習の表現技術を応用・発展させたり,文章と絵画を効果的に組み合わせた表現方法を主体的に工夫できる場を提供できるかどうか考察する。道徳の授業では,姫路市の日本赤十字病院内の院内学級に通っていた12歳の少女が(平成10年に病没),同級生の行った数々のいたずらを他者肯定の視線で見つめた文章を元につくられた絵本『ゆきちゃん物語』を資料にするとともに,絵画表現の絵本づくりの参考にもする。
著者
橋本 忠和
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.321-332, 2020-02

本研究は筆者の「ごっこ遊び」と社会情動的スキルとの関連性に基づく研究を基礎に,幼児教育現場で様々な機会に活用され,幼児の豊かな想像性や言語に関する感覚等を育成する手立てとして位置づけられている「絵本」に着目し,保護者と連携した「絵本」の読み聞かせの実践が5歳児の社会情動的スキルを育む上でどのような可能性を有しているのか考察することを目的としている。研究手法としては,絵本「ないた:中川 ひろたか:作」を教材として使用し,主人公の顔を見て母親が涙を流す理由を幼児と保護者が対話を通して考える場面の幼児の発言及び保護者,保育者の反応等を「社会情動的スキル(目標の達成・他者との協働・情動の抑制)」の分類を観点として分析し,絵本の読み聞かせと社会情動的スキルとの接点を考察した。すると,絵本の読み聞かせが幼児の社会情動的スキルの分類の各要素を育成する可能性を見出すことができた。
著者
橋本 忠和
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 (ISSN:21854483)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-16, 2009

身近な環境を造形物で異化する美術の授業を行おうとした時、活動に同意しない児童が出てきた。これは、環境を異化する必然性が見いだせなかったことが原因と思われた。そこで、本論では、クリスト&ジャンクロードのザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性についての分析を手がかりに、児童が主体的に環境を異化する造形活動について考察する。近年、都市・地方を問わず、生活環境の中で造形活動を行う取り組みが盛んに行われている。そこでは、造形活動が環境を異化することで、身近な環境への気づきをもたらし、人間と環境が関わる意味を増幅して引き出していると思われる。しかしながら、ザ・ゲーツプロジェクトが実現に25年を要したように、環境を異化する造形活動は日常生活に制約や心理的不安を与える場合もあり、その活動を行う必然性について住民に説明して理解を得るのに、多くの時間と労力を必要とする場合がある。それは、児童が行う環境を異化する造形活動においても同様と思われる。すなわち、児童が身近な環境を異化する必然性を見いだすことができなければ、主体的な環境への働きかけは行われないと思われる。そこで、まず、「一貫性」、「分かりやすさ」、「複雑性」、「ミステリー」の4つの観点で、ザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性について分析した。そして、その分析を手がかりに児童が主体的に環境を異化するために、どのような要素で造形活動を構成すればよいのかについて考察した。さらに、その要素を生かした授業実践例の開発に取り組んだ。