- 著者
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上原 聡
- 出版者
- 嘉悦大学
- 雑誌
- 嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.1-14, 2010-10-25
消費者行動研究では、消費者をコンピューターに見立てた情報処理アプローチが1970年代における主要な研究パラダイムであった。情報処理アプローチのような、認知過程を中心に展開された消費者意思決定モデルの中では、感情は認知過程の付随的要素として扱われてきた。しかし、さまざまな領域で感情の研究が進展したことを受け、1980 年代から現在にかけて、消費者行動研究のテーマとしての感情研究の重要性は徐々に高まっている。 このように、感情研究の重要性は認められてはいるが、その機能および構造が体系化された先行研究がみられないことが問題点として指摘できる。 そこで本稿の目的は、人間が日常的に行う社会的判断(意思決定)に焦点を絞り、感情を考慮した消費者行動研究を拡充していくための理論的基盤として、感情がどのような機能を果たしているか、さらに、感情をどのような構造として理解すべきかを解明することにある。そして、感情の機能と構造を解明するために社会心理学や感情心理学の知見を導入している。 結論として、感情構造を「快楽-覚醒」の2 軸により分類し、これにポジティブ感情とネガティブ感情を対応させ、それぞれをムードと情動に区分した上で、4 つの感情タイプ別に感情機能を説明することができた。最後に、この仮説を裏づけるため、社会的判断の場面である購買行動について実際にフィールド調査を実施し、データによる実証分析から、選択され易い認知処理方略を含む購買行動特性を感情タイプ別に明らかにしている。