- 著者
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高橋 昭
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.133-142, 1977-12-01
近年,日本産Neope属は2種の独立種に分離されたが,この両者に対して用いられるべき学名については未検討のままである.筆者は,これら日本産Neope 2種に関するすべての原記載と,British Museum (Natural History)所蔵のButlerが記載したN. niphonica, N. japonicaのダイプ標本を検討し,サトキマダラヒカゲにはN. goschkevitschiiの学名を,ヤマキマダラヒカゲにはN. niphonicaの学名を用いるのが正しいと結論した.N. goschkevitschiiの原記載には,タイプ標本をGoschkevitschが採集したことが記されているので,彼の足跡を歴史的に検討すると,1854年12月4日に下田港に到着し,12月23,24日の両日におきた安政地震と津波でDiana号が大破したため,1855年7月14日まで伊豆半島(主として下田,戸田(へだ))に滞在したことが明らかとなった.Menetriesの原著には図版が添付されており,この図から,N. goschkevitschiiは明らかにサトキマダラヒカゲ春型♂と判断され,本種のタイプ標本は1855年の春に伊豆半島(下田,戸田またはその近傍)で採集されたものと思われる.