著者
高橋 昭紀
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態學會誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.47-53, 2014-03

白亜紀/古第三紀境界(K/Pg境界; 約6,600万年前)で生じた、小惑星衝突を引き金とする大量絶滅について、動物の分類群ごとによる絶滅の選択性(絶滅したか、生き延びることができたか)の原因に関してレビューする。同境界において、陸上脊椎動物では非鳥型恐竜類と翼竜類などが絶滅して、鳥類・カメ・ワニ・トカゲ・ヘビや両生類・哺乳類などは絶滅しなかった。その選択性の原因として、(1) 衝突後数分から数時間までに、木陰や洞穴、淡水環境に逃避できたか否かという生態や生活様式の違い、(2) 生食連鎖か腐食連鎖のどちらに属するかという違い、および(3) 体サイズにより必要となる餌やエネルギー量の違い、が挙げられる。これらの複合的な生態の相違によって、大量絶滅時の選択性が左右されたのである。また、アンモナイト類は絶滅したが、オウムガイ類はK/Pg境界を超えて生き延びることができた。この運命を分けた原因は、幼生期に海洋表層でプランクトン生活を送っていたか、それとも深海で棲息していたかという棲息場所の違いである。その結果、衝突後に大量に降ったと推定されている酸性雨からの被害が大きく異なり、両者の運命を分けたと考えられる。長年、白亜紀末の絶滅の生物選択性には多くの疑問が提示されてきたが、以上で挙げたような生態学的要因によって、その多くが説明できると考えられる。
著者
藤岡 祐介 安井 敬三 長谷川 康博 高橋 昭 祖父江 元
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.634-640, 2009 (Released:2009-12-07)
参考文献数
27
被引用文献数
9 8

意識障害と痙攣で発症した重症熱中症の47歳,男性症例.意識障害の改善後,高度の無為・無欲,体幹失調等の小脳性運動失調症候がみられた.急性期の頭部MRI拡散強調像(DWI)にて小脳皮質に,ADC値の低下をともなう異常高信号がみられた.発症約2カ月後,体幹失調,構音障害は改善したが,四肢の測定障害はむしろ悪化した.MRI(DWI)上の異常高信号は消失したが,小脳は萎縮傾向を示し,脳血流シンチグラフィでは小脳歯状核部の血流低下が増強した.DWIでの異常高信号は,高体温による小脳Purkinje細胞の細胞性浮腫を捉えた可能性があり,その後の小脳萎縮の出現や後遺症の有無について注意深く検討する必要があることを示している. 本症例では急性期に酒石酸プロチレリンを使用し,無為・無欲に対する有効性を確認した.熱中症後の無為・無欲の改善を期待し試みられるべき治療の一つであると考える.
著者
高橋 昭
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8special, pp.1404-1421, 1980-08-20 (Released:2011-11-04)
参考文献数
70
著者
根岸 雅夫 笠間 毅 福島 俊之 田畑 穣 小林 和夫 井出 宏嗣 高橋 昭三
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.121-124, 1991-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

39歳女性の筋炎症状を伴った全身性強皮症〔progressive systemic sclerosis (PSS) 〕を精査加療した.患者は強度のレイノー現象にひき続く一過性の頭痛が頻発していた.附加観察として, 本症例を含む6例のPSS患者に寒冷刺激負荷試験を行い, その前後における眼底血管の変化を観察した.その結果レイノー現象に伴って頭痛を訴える患者群には眼底動脈の拡張が認められた.以上よりレイノー現象は四肢末端にとどまることなく大脳内末梢血管にも影響していることが示唆された.
著者
高橋 昭紀
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.47-53, 2014-03-30 (Released:2017-05-19)
参考文献数
56
被引用文献数
3

白亜紀/古第三紀境界(K/Pg境界;約6,600万年前)で生じた、小惑星衝突を引き金とする大量絶滅について、動物の分類群ごとによる絶滅の選択性(絶滅したか、生き延びることができたか)の原因に関してレビューする。同境界において、陸上脊椎動物では非鳥型恐竜類と翼竜類などが絶滅して、鳥類・カメ・ワニ・トカゲ・ヘビや両生類・哺乳類などは絶滅しなかった。その選択性の原因として、(1)衝突後数分から数時間までに、木陰や洞穴、淡水環境に逃避できたか否かという生態や生活様式の違い、(2)生食連鎖か腐食連鎖のどちらに属するかという違い、および(3)体サイズにより必要となる餌やエネルギー量の違い、が挙げられる。これらの複合的な生態の相違によって、大量絶滅時の選択性が左右されたのである。また、アンモナイト類は絶滅したが、オウムガイ類はK/Pg境界を超えて生き延びることができた。この運命を分けた原因は、幼生期に海洋表層でプランクトン生活を送っていたか、それとも深海で棲息していたかという棲息場所の違いである。その結果、衝突後に大量に降ったと推定されている酸性雨からの被害が大きく異なり、両者の運命を分けたと考えられる。長年、白亜紀末の絶滅の生物選択性には多くの疑問が提示されてきたが、以上で挙げたような生態学的要因によって、その多くが説明できると考えられる。
著者
佐藤 正樹 加藤 治 堀江 隆 川村 剛 真銅 解子 高橋 昭公 芳賀 みのり
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第9回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.25-30, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
6

2000 年代に入り、日本の企業による論文発表数が減っているといわれている。文部科学省科学技術政策研究所での研究でも、国内企業の論文発表件数は減少していると発表されている。しかしこれまで、日本国内で発表されている論文数の分析や、その結果と国内特許を合わせた分析は、ほとんど実施されていない。そのため JST と INFOSTA では、国内資料も含めた、電機系と化学系企業の論文発表および特許出願の状況調査を試みた。まず JDream II と PATOLIS を使用して、電機系と化学系企業の論文発表、特許出願状況を調査した。また、企業が投稿した論文誌等の科学技術資料の種類も調査した。科学技術資料は、分野、査読の有無、業界での注目度により分類できるため、企業が多く投稿する資料を分析した。さらに、今回調査した結果を基に、論文件数および特許出願数と社会情勢の比較等、調査した企業研究開発の状況を考察した。今後、他業種の企業の論文発表数調査や、企業内部の技術分野別の動向等、調査していきたい。
著者
高橋 昭治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.398-403, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)

エルゼビアは140年以上の歴史を持つ世界最大の学術出版社であるが,近年は情報分析企業の性格を強めてきている。その変化のきっかけは,2004年の抄録・引用文献データベースScopusの発表であった。当初Scopusは研究者と図書館員のための文献検索ツールとして設計されたが,高精度の著者・所属機関プロファイルの実装により,研究力分析のためにも使用されるようになった。本稿では,研究力分析ツールSciValをはじめとする製品・技術面での進展,研究評価者などへの利用者の拡大,そして今後期待される研究支援のデジタル・トランスフォーメーションへの貢献の展望について解説する。
著者
塩澤 全司 高橋 昭
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.10-19, 2000

向坂兌(1853年4月~1881年6月)は,明治維新に活躍した日本の法曹界の偉人である。28歳で夭逝したため,現在その名を知る人は少ない。向坂は佐野藩に育ち,明治3年に貢進生となり,大学南校に進み,東京開成学校で学び,学力優秀であった。入江陳重,岡村輝彦らとともに,明治9年に第2回文部留学生として英国に留学し,Middle Templeにて法律を学び,明治12年に英国の法廷弁護士・バリスター(barrister)の資格をとる。その後,ヨーロッパ各国を歴訪し,明治14年5月に帰国したが,肺結核のため,同年6月14日に他界した。夭逝を悼む人が多く,顕彰碑が建てられた。これは戦争で戦火に破損されてはいるが,今も龍巌寺に存在する。向坂兌の姉は「升」といい,名古屋大学第三代学長勝沼精藏の祖母である。升は,夫・精之允が35歳で自害し,息子・五郎が40 歳で遭難死したため,孫の精藏と六郎を養育した。国際的な活躍をし,多くの人々を導いた勝沼精藏は,若くして他界した向坂兌の遺影を大切にしていた。
著者
高橋 昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.2241-2244, 2002-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12
著者
高橋 昭子 小口 高 杉盛 啓明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.800-818, 2003-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
43
被引用文献数
8 6

多摩丘陵と隣接する低山を対象に解像度10mのDEMを作成し,DEMの解像度とDEMから計算される地形量との関係を調べた.DEMの解像度が低下すると算出される傾斜が減少し,縦断曲率はゼロに収束する.傾斜の減少量は既存の事例よりも概して大きく,複雑な地形を持つ日本の丘陵地や低山の地形解析には高解像度のDEMが必要なことを示している.次に,50-m DEMの補間によって得られた10-m DEMの地形表現力を検討した.補間の誤差が最小であった手法は,薄板スプライン関数を用いた動径基底関数法,最小曲率法,平滑化を行わない修正シェパード法であり,クリギング法も実際のバリオグラムに対応した関数を用いた場合には有効であった.補間によって解像度を高めたDEMでは傾斜の表現力が向上しているが,縦断曲率の表現は不十分である.調査地域の一部では,過去数十年間に大規模な人工地形改変が行われたが,上記した補間の誤差に関する検討結果は,地形改変の程度には基本的に依存しない.
著者
高橋昭一著
出版者
シルクロード
巻号頁・発行日
1988
著者
高橋 昭公 渡邉 晃
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第10回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.99-104, 2013 (Released:2013-09-24)
参考文献数
10

新規用途開発の成否は優れたアイデアの発想が鍵となるので、その発想を支援する多くの提案・検討がなされていたが、今日なお主流となりうるような支援方法は見当たらない。効率的にアイデアを発想できる新規プロセスの実現をテーマに取り上げたOUGインターネット/ビジネス分科会において、アイデア発想の重要なステップである「資料の収集」などのステップに、発想の支援に優れた特徴を有するとされている JST のJ-GLOBAL を適用したアイデア発想支援システムを想定し、アイデア発想への効用が大きいことが推測できた。さらに、当該支援システムに Excel を用いた独自の工夫を加味して、絞込み検索の出力を可視化した結果、発想が豊富化し観点も多面化できる期待がもてた。
著者
津田 祥平 中川 佳織 大山 俊幸 高橋 昭雄 岡部 義昭 香川 博之 山田 真治 岡部 洋治
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 2010
被引用文献数
1

相分離変換システム法により,天然リグニンから精密な分子設計の下に誘導されるリグニン系新素材であるバイオマス由来リグノフェノールのエポキシ樹脂硬化剤への適用可能性を検討した。エポキシ樹脂としてビスフェノールA ジグリシジルエーテル(DGEBA),硬化剤としてリグノフェノール(LP),硬化促進剤として1- シアノエチル-2- エチル-4- メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)を用い,エポキシ基と水酸基の当量比を1:0.9 とした系において,硬化物のガラス転移温度が198℃を示し,石油由来のフェノールノボラック(PN)を硬化剤とした硬化物を約60℃上回った。さらに5% 熱重量減少温度も373℃と熱的に安定であった。FT IR 測定において,910cm<sup>-1 </sup>のエポキシ基由来の吸収帯が消失していることから,LP の水酸基がDGEBA のエポキシ基と十分に反応していることが観察された。また硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,PN 硬化物と比較して,室温での貯蔵弾性率の上昇,および架橋密度の上昇が観察された。以上の結果より,リグノフェノールはエポキシ樹脂の硬化剤として適用可能であり,最大で49% のリグノフェノールを含むエポキシ樹脂硬化物が作製できることが示された。