著者
中島 秀雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.195-205, 1991-10-15

Operophteraは日本に6種分布している.そのうち,Operophtera brumata(LINNAEUS)は旧北区に広く分布しており,日本でも全国的に広く産することが知られていた.そして,その近縁種のO. fagata (SCHAR-FENBERG)はヨーロッパに分布し,brumataに比べて♂の前翅長が大きく,黄白色で光沢があり,♀においても前翅長が大きいことで明確に識別されていた.私は,日本の各地の多数の個体を採集して調べて行くうちに,日本のものにも♀の前翅に大小の差があることに気づき,fagataの分布の可能性を考慮して再検討した.しかし,ヨーロッパの2種の雌雄を入手して比較したところ日本のものは外観および交尾器にbrumata, fagataとは明瞭な差異が認められ,別種と判断できた.さらに,日本に生息しているものを交尾ペアを重点的に比較した結果,2種含まれている結論に達したので,これらを新種として記載した.Operophtena brunnea NAKAJIMA, sp. n. コナミフユナミシャク(新称) ♂の前翅長は14-17mm.外観はbrumataに似る.触角の中央部から先端の各節は短い.前翅は灰褐色から暗褐色で中横線,外横線,亜外縁線は波状に走る.翅の色は変化に富むが,brumataのように赤みを帯びることはない.♀の前翅長は1-3mm.体は暗褐色で前翅は非常に小さい.♂交尾器はbrumataに似るが,valvaの幅は狭い.Cornutiは長短2本の針状の突起からなり,brumata, fagata,もう一種の新種のvulgarisに比べて短い.♀の交尾器ではsignumを欠く.一方brumataは2個,fagataでは1個生じる.北海道,本州,九州に分布し,各地で採集されている.関東地方でみると,低山地に多いが,中禅寺湖(1,300m)などがかなり高標高の地域まで産するOperophtera vulgaris NAKAJIMA, sp. n. オオナミフユナミシャク(新称) ♂の前翅長は16-22mm.触角は中央部から先端の各節で長く,前種との良い区別点となる.前翅長は変化に富むが一般にbrumata, fagata, brunneaに比べて大きい.前翅の色も変異があるが,灰白色から灰褐色である.Brunneaとは個体変異を含めてみると,外観で区別することは困難であるが,本種では中横線が前縁の近くで外側にくの字状に切れ込み,真っすぐ前縁に向かううbrunneaとの区別の目安になる.♀の前翅長は3-5mm.Brunneaに比べて前翅が大きい.Fagataに似るが前翅がやや幅狭い.♂交尾器のvalvaはbrumata, fagataに比べて幅狭い.Brunneaに非常によく似ており,valvaの形状で区別するのは困難である.Cornutlはbrunneaに比べて長いのでこの点で区別できる.♀交尾器のsignumは1個生じる.その形状は小さい突起が多数集合するが,その数には変化があり,突起がほとんど無く板状になるものもある.本種は北海道,本州に広く分布し,前種との混生地も多い.そして,垂直分布は関東地方でみると500m位の低山から1,500mの亜高山帯まで産する.多摩湖(150m)では本種は生息しない.高尾山山頂付近(480m)ではbrunnea, vulgarisともいる.

言及状況

Twitter (2 users, 5 posts, 1 favorites)

こんな論文どうですか? 日本産Operophtera属(鱗翅目,シャクガ科)の2新種の記載(中島 秀雄),1991 http://t.co/HOJAxMPup0
こんな論文どうですか? 日本産Operophtera属(鱗翅目,シャクガ科)の2新種の記載(中島 秀雄),1991 http://t.co/HOJAxMPup0
こんな論文どうですか? 日本産Operophtera属(鱗翅目,シャクガ科)の2新種の記載(中島 秀雄),1991 http://t.co/K26vBIcK
こんな論文どうですか? 日本産Operophtera属(鱗翅目,シャクガ科)の2新種の記載(中島 秀雄),1991 http://t.co/K26vBIcK

収集済み URL リスト