- 著者
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安富 和男
- 出版者
- 都市有害生物管理学会
- 雑誌
- 家屋害虫 (ISSN:0912974X)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.139-143, 1995-12-20
世界各地に分布するイエバエMusca domestica L.は家住性のハエと呼ばれるように,人家内に侵入する性質が強い。そのイエバエに性決定機構の異常が起こっている。近年,日本では異常な性決定機構をもつイエバエが年々増加し,正常な標準型が急速に減少してきた。オスでは,本来Y染色体上にあるはずの雄性決定因子(M)が常染色体に転座して組みこまれたA^M型,さらにメスでは,複数のM因子に対して上位に働くF因子をもつFA^MA^M型の急増である。遺伝学的特性の研究から,この現象は環境汚染物質の蔓延,とくに有機リン剤の連用と因果関係がありそうだと推論されている。この機会に,現在までに報告された知見を要約しておきたい。