著者
安富 和男
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.63-67, 2000-01-30
参考文献数
7

1.ゴキブリは古生代石炭紀の原ゴキブリ類から現存の種類まで,3億年の間子孫を継承し続けてきた「生きた化石」である。2.日本産ゴキブリは9科,25属,52種7亜種記録されており,家屋内の害虫ゴキブリは年々分布を北にひろげている。3.ゴキブリ繁栄の理由は,旺盛な繁殖力,弾力性に富む体,強い脚力,鋭い感覚,雑食性,飢餓に耐える生理機構,殺虫剤抵抗性の発達などにある。4.「人類のあとはゴキブリの時代か?」についても推察した。
著者
大滝 哲也 長 正雄 引地 徳郎 桑原 豊吉 安富 和男 朝比奈 正二郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.193-198, 1964
被引用文献数
1

1.1964年6月10日より9月6日まで, 埼玉県越ケ谷市の大規模な養鶏業者が集まつている部落で, そこに多量に発生しているオオイエバエを駆除する目的で, 殺虫剤撒布による野外実験を実験した.2.撒布殺虫剤はいずれも人畜低毒性の, Nankor Sumithion, Dipterexを選び, 部落を3つの実験区にわけ, それぞれ2週間おきに6回各乳剤の稀釈液を撒布した.第1回から第3回の散布までは, 原体量で0.05%を含む各乳剤の稀釈液を, 鶏舎ならびに乾糞場の鶏糞に1m^2当り500mlずつ撒布した.第4回から第6回までは鶏糞の他に, 鶏舎ならびに付近の住居の天井, 壁面に対する残留噴霧(0.5%, 1m^2当り50ml)もあわせ実施した.3.ハエの棲息密度の調査には, ハエ取りリボンと, ハエ取り紙を用いた.その結果, 殺虫剤撒布前に非常に多かつたオオイエバエは, 薬剤撒布によつて次第に減少し, 第3回撒布以降は極めて少数となつた.しかし, その頃からイエバエが増加しはじめ, 一時その数がかなり多くなつた.4.この地区でのオオイエバエの多量発生は, バタリーないしケージ鶏舎によるニワトリの多羽飼育と深い関係があると思われるが, オオイエバエの殺虫剤撒布による減少と同時にイエバエが多量に発生しはじめたことは特殊な条件によるものか, 一般的なものか, なお検討する余地が残されている.
著者
安富 和男 高橋 三雄
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.315-321, 1989
被引用文献数
3 2

Culex tritaeniorhynchus mosquitoes collected at Chinen Village, Okinawa, in 1987 and colonized in the laboratory were tested for resistance to insecticides. High resistance levels of the Chinen strain to organophosphorus (OP) and carbamate insecticides were similar to those of 16 samples in the 1984 country-wide survey in which no material from Okinawa was included. Extremely high levels of resistance to malathion and temefos were observed in the Chinen strain; the resistance ratio in larvae was about 10,000 for malathion and >125,000 for temefos. However, the Chinen strain was less resistant to fenitrothion, fenthion, and carbamates than the mosquitoes tested in 1984. The electrophoretic analysis indicated that the Chinen strain showed higher activity of carboxylesterases which hydrolyze β-naphthyl acetate than in the susceptible (Taiwan) strain. Therefore, the enhanced carboxylesterase activity was estimated to be a mechanism of OP resistance in the Chinen strain, although the role of acetyl-cholinesterases has not been analyzed. The Chinen strain was also resistant to pyrethroids with the resistance ratios of 50-1,000 for larvae. This finding was contrary to the results in the 1984 survey. When piperonyl butoxide was applied, LC_<50>'s of permethrin and cypermethrin for Chinen larvae were decreased by 1/3 and 1/23,respectively, but a considerable difference between LC_<50>'s for Chinen and Taiwan larvae remained in each of these pyrethroids. This indicates mfo's are not major factors regulating pyrethroid resistance in the Chinen strain. Application of an inhibitor of DDT-dehydrochlorinase (DMC) and an inhibitor of mfo's (sesamex) did not affect the LC_<50> of DDT for Chinen larvae. Experimental crosses of the Chinen strain with the susceptible (Taiwan and e ma) strains showed that pyrethroid resistance of the Chinen strain is regulated by genetically recessive factor(s). This indicates that kdr-like factor(s) might participate in resistance of this strain to pyrethroids and DDT.
著者
安富 和男
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.124-129, 1961
被引用文献数
2

茨城, 千葉両県下の一部地域で, 1960年秋より1961年春にかけて採集したイエバエ群を主な実験材料として, diazinonに対する抵抗性の発達, 消失, ならびに交叉抵抗性の関係について実験した結果, 次のような諸点が判明した. 1.茨城県鉾田町美原地区, 茨城町小幡地区, 千葉県袖カ浦町浜宿地区などから採集したイエバエ群は, 標準の高槻系統の10〜20倍の(LD)_<50>値を示したが, これらを, さらに実験室的に5世代, diazinonで淘汰すると, 2〜4倍抵抗性が増大し, とくに, 鉾田産イエバエ群を6代淘汰したものは, 高槻系統に比べて, 約100倍大きなLD_50の値(2.5098μg/♀fly)を示した.しかし, 彦根産イエバエ群を8代淘汰しても, 抵抗性は2.2倍しか増大せず, 抵抗性の発達度は, イエバエのpopulationによつて大差が見られる.また, 茨城県出島村上郷地区産イエバエは, 実験室における3代の淘汰よりも現地における1年間のdiazinon撒布(10回の残留噴霧)の方がむしろ抵抗性の発達が大きかつた. 2.RP系統では, 46世代薬剤との接触なしに飼育しても, diazinon抵抗性は低下しなかつたが, 鉾田産イエバエ群, および茨城町産イエバエ群では, 薬剤との接触なしに5世代の間飼育すると, diazinon抵抗性は若干消失するが, さほど顕著でなかつた. 3.Diazinonに抵抗性の強い各イエバエ群は, DDVP, malathion, Nankor, Baytexに対しても, 標準の高槻系統より2〜4倍程度大きな値を示したが, diazinonの場合に比べると, Resistance ratioは小さかつた.
著者
安富 和男
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.139-143, 1995-12-20

世界各地に分布するイエバエMusca domestica L.は家住性のハエと呼ばれるように,人家内に侵入する性質が強い。そのイエバエに性決定機構の異常が起こっている。近年,日本では異常な性決定機構をもつイエバエが年々増加し,正常な標準型が急速に減少してきた。オスでは,本来Y染色体上にあるはずの雄性決定因子(M)が常染色体に転座して組みこまれたA^M型,さらにメスでは,複数のM因子に対して上位に働くF因子をもつFA^MA^M型の急増である。遺伝学的特性の研究から,この現象は環境汚染物質の蔓延,とくに有機リン剤の連用と因果関係がありそうだと推論されている。この機会に,現在までに報告された知見を要約しておきたい。
著者
鈴木 猛 椎名 実 土屋 芳春 安富 和男 喜島 功 平社 俊之助
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.268-275, 1959

1.千葉八日市場市の農村部落において, 1959年6月1日より7月28日に至る間に, 各種malathion製剤を用いてハエ成虫・幼虫及び蚊幼虫駆除の実地試験を行つた.2.20%malathion乳剤40倍稀釈液か, 0.7%malathion油剤を, 家屋内の天井全面に1m^2あたり27〜42cc撒布することにより, 屋内のハエの棲息密度が著しく減少し, この効果は7〜10日間持続する.なお, ハエの棲息密度判定法として, 屋内に設置したハエとりリボン及びハエとりビンの捕集数は, 高い相関関係にあることを知つた.3.便池のハエ幼虫に対しては, 20%malathionの200倍液を表面積1m^2あたり2l, あるいは1.5%malathion粉剤を1m^2あたり100g撒布することにより, 1日後にほとんどすべての幼虫が死滅したが, 7日後にはかなりの幼虫数の回復が認められた.4.実験的に積んだ堆肥にmalathion製剤を撒布した結果, 20%乳剤200倍液の2l/m^2撒布ではハエの発生防止効果がほとんど認められないにもかゝわらず, 1, 000倍稀釈液の10l/m^2撒布では顕著な効果があることを知つた.また, 1.5%粉剤の100g/m^2撒布では, 対照に比較して, 58.9%のハエを発生させる効果にとどまつた.5.滞水域のアカイエカ幼虫に対して, 20%malathion乳剤を100倍にうすめ, 表面積1m^2あたり100cc撒布すれば, 幼虫は全く死滅し, その後7〜10日はほとんど再発生を認めなかつた.しかしこの量の撒布では, サナギに対する効果はほとんどなかつた.