本論文では,モバイル無線端末間の無線通信履歴とモバイル無線端末のGPSなどから得られる端末の移動履歴を用いて,建物などの位置および形状を推定する手法を提案する.災害発生時に効率の良い傷病者救助活動を行うためには,災害現場の地理情報,特に,現在移動可能な領域を特定することが非常に重要であるが,建物の倒壊や道路の寸断,建造物情報の不足などにより既存の地図では不十分な場合が多い.赤外線やレーザによるレンジセンサ,カメラを用いた画像解析によって建造物を推定する手法も多く研究されているが,ハードウェアコストや測定にかかる人的コストが無視できない.これに対し,提案手法では医療従事者などが保持するモバイル無線端末の無線アドホック通信機能とGPS測位機能のみを仮定し,それらの人員が領域を歩き回ることで得られる端末間の通信情報と,端末の位置情報のみを用いて障害物の位置や形状を推定し,対象領域の地図を自動作成する.150m×190m内にいくつかの建造物が存在する領域を対象に,15人の移動を想定した実機実験で提案手法の性能を評価した結果,約350秒で推定精度85%程度の地図を生成できることを確認した.また,シミュレーション実験により様々な環境で提案手法が有用であることが示された.In this paper, we propose a method to automatically recognize the situation of a disaster site. The method assumes that rescue parties have mobile terminals that are equipped with GPS receivers and wireless communication devices. Using the position information and wireless ad-hoc link information from the terminals, which are automatically recorded during those parties' rescue operations, the method estimates the presence and shapes of obstacles in the site. The results from the experiments have shown that our method could achieve certain accuracy within reasonable time.