著者
前川 勇樹 境 裕樹 内山 彰 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoNA, モバイルネットワークとアプリケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.168, pp.31-36, 2013-07-25

本報告では,鉄道の乗車車両に応じてユーザ間で観測されるBluetooth受信信号強度が異なることに着目し,複数の乗客が持つスマートフォンで検出されたBluetoothの近接デバイス情報を活用して乗車車両を推定する手法を提案する.提案手法では,検出履歴からユーザ組ごとの相対乗車車両を算出し,それらをサーバに集約することで,同一車両グループを決定する.さらに,得られたグループ間の相対的な車両位置情報からグループの乗車車両の推定を行うことで最終的にユーザの乗車車両を推定する.受信信号強度の不安定性が推定精度に与える影響を軽減するために,ベイズ推定法に基づくフィルターを用いて相対乗車車両の推定を行う.さらに,ユーザ組の相対乗車車両情報を集約してクラスタリングを行うことで全体の位置関係を推定し,個々の乗客による単一の推定と比較した推定精度の向上を図るとともに,新規参加ユーザの推定結果が迅速かつ高精度に得られるようにしている.大阪市営地下鉄御堂筋線において提案手法の実証実験を行った結果,3両の列車に乗車した15人のユーザについて,推定精度は98%となり正しく同一車両乗車グループを推定できることが分かった.
著者
梶田 宗吾 天野 辰哉 山口 弘純 東野 輝夫 高井 峰生
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1270-1282, 2019-07-15

本研究では,多数のアクセスポイント(AP)の混在により混雑をきわめる都市部の2.4GHz Wi-Fi環境において,チャネル間の利用周波数重複によるチャネル間干渉の影響を低減するようなAP向けチャネル選択手法を提案する.提案手法により,自律チャネル制御による干渉回避手法の実現と同時に,有限なチャネル資源のより効率的な活用を目指す.対象とするAPにおいて,MACフレーム観測を実施することで各チャネルの利用状況を把握し,これに基づきチャネル切り替えの指標となる通信品質を予測する関数を設計する.予測関数は,トラフィック飽和に基づく分類器と飽和時にどれほど厳しい飽和状態にあるのかを定量化する重回帰式によって構成され,ネットワークシミュレータで作成した訓練データを用いて構築した.大阪市で実際に収集したAP設置情報を用いた評価実験において,提案手法は,ランダムなチャネル選択と比較し,スループットが1.83倍となることを示した.
著者
樋口 雄大 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1274-1283, 2016-04-15

本論文では,スマートフォン等のモバイル機器に内蔵された加速度センサと磁気センサとを組み合わせることで,端末保持者が乗車する電車の移動状態を高精度に検出する手法を提案する.提案方式では,磁気センサを用いて鉄道車両の電気系統の動作状況を検出するとともに,走行状態に応じた特徴的な加速度特性をもとに判定結果を補正することで,揺れの少ない車両でも高精度な移動状態判定を実現している.京阪神エリアの複数の鉄道路線においてフィールド実験を実施し,電車の移動状態の検出精度を,従来方式と比較して大幅に改善できることを確認した.
著者
勝田 悦子 内山 彰 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.476, pp.61-67, 2012-03-05

GPSは多くの携帯電話に搭載され,我々の生活に欠かせないものとなっているが,都市部においてはビルなどの障害物による遮蔽や反射・回折の影響を受け,測位誤差が大きくなることが知られている.そこで本研究ではGPSの見通し状況と建物情報を利用した位置推定精度向上法を提案する.提案手法では都市部においてビルなどによりGPS衛星の見通し状況が端末の位置及び衛星の位置ごとに変化し,それに応じて信号の受信状況が変化することに着目する.周辺の建物情報に基づくGPS見通し状況を各地点において事前に計算することでフィンガープリントを構築し,受信状況から推定したGPSの見通し状況とのマッチングによって位置精度向上を図る.その際,複雑なGPS受信状況に対する堅牢性を実現するため,信頼性の低い見通し状況推定結果を事前観測に基づき除外する.大阪駅周辺で取得したデータを用いて性能を評価した結果,確率0.9で平均誤差17.9m相当の領域を特定できることが分かった.
著者
南本 真一 藤井 彩恵 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.2169-2183, 2010-12-15
被引用文献数
2

本論文では,モバイル無線端末間の無線通信履歴とモバイル無線端末のGPSなどから得られる端末の移動履歴を用いて,建物などの位置および形状を推定する手法を提案する.災害発生時に効率の良い傷病者救助活動を行うためには,災害現場の地理情報,特に,現在移動可能な領域を特定することが非常に重要であるが,建物の倒壊や道路の寸断,建造物情報の不足などにより既存の地図では不十分な場合が多い.赤外線やレーザによるレンジセンサ,カメラを用いた画像解析によって建造物を推定する手法も多く研究されているが,ハードウェアコストや測定にかかる人的コストが無視できない.これに対し,提案手法では医療従事者などが保持するモバイル無線端末の無線アドホック通信機能とGPS測位機能のみを仮定し,それらの人員が領域を歩き回ることで得られる端末間の通信情報と,端末の位置情報のみを用いて障害物の位置や形状を推定し,対象領域の地図を自動作成する.150m×190m内にいくつかの建造物が存在する領域を対象に,15人の移動を想定した実機実験で提案手法の性能を評価した結果,約350秒で推定精度85%程度の地図を生成できることを確認した.また,シミュレーション実験により様々な環境で提案手法が有用であることが示された.In this paper, we propose a method to automatically recognize the situation of a disaster site. The method assumes that rescue parties have mobile terminals that are equipped with GPS receivers and wireless communication devices. Using the position information and wireless ad-hoc link information from the terminals, which are automatically recorded during those parties' rescue operations, the method estimates the presence and shapes of obstacles in the site. The results from the experiments have shown that our method could achieve certain accuracy within reasonable time.
著者
山口 弘純
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では地下街やビル屋内での人々の位置・行動情報を,特別な測距デバイスやインフラを必要とせず,高精度かつリアルタイムに推定する技術(位置行動推定技術)と,それに基づき位置情報サービスを提供するミドルウェアの設計開発を行った.スマートフォンが備える加速度センサー・ジャイロ,電子コンパスの情報を取得し,センサーデータを活用した位置推定技術を開発実装し,イベントスペースや商業施設等を含む様々なアプリケーションシナリオにおけるシミュレーション実験ならびに実証実験を実施することでその有効性を示した.
著者
藤井 彩恵 内山 彰 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.3601-3611, 2008-10-15

本論文では,正確な位置情報を発信する固定ノード(ランドマーク)や他の移動ノードとの遭遇情報を収集し,それらを用いて移動ノードの軌跡をオフライン(非リアルタイム)で推定する手法を提案する.提案手法では,ランドマーク間を最も直線に近い軌跡で移動したと考えられるノードの移動軌跡を推定し,その移動軌跡を他のノードの軌跡の推定に用いるという処理を繰り返す.さらに,シミュレーテッド・アニーリング(SA)を用いて,全移動端末の軌跡を一括して修正することにより,移動軌跡の精度を向上させる.シミュレーション結果より現実的な環境下で推定誤差が最大無線到達距離の40%程度に抑えられることを確認した.In this paper, we design and implement an algorithm to estimate the movement of wireless terminals. The proposed method relies on the history of ad hoc wireless communication between those terminals and the landmark stations to track the movement of each terminal. The principle of the algorithm design lies in iterative refinement of their positions so that they finally settle in appropriate positions that satisfy the constraints derived from the given communication history. We have evaluated the performance of our algorithm by simulations and confirmed that the average position estimation error was less than 40% of the wireless range with realistic settings.
著者
上嶋祐紀 内山彰 山口弘純 東野輝夫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2014-UBI-41, no.32, pp.1-8, 2014-03-07

本研究では都市部における GPS を用いた高信頼な端末の存在領域推定を目標に,都市部の 3 次元モデルを利用した手法を提案する.提案手法では,各地点と各 GPS 衛星の間に障害物が存在する状態 (NLOS:None-Line-Of-Sight) であるか,または存在しない状態 (LOS:Line-Of-Sight) であるかを事前に計算し,フィンガープリントとする.携帯端末が受信した GPS の Signal to Noise Ratio (SNR) から LOS/NLOS を学習データに基づき判定し,その判定結果とフィンガープリントに応じて各地点に端末が存在している尤度 (存在尤度) を決定する.しかし,フィンガープリントとのマッチングのみではフィンガープリントの境界付近において安定した結果が得られない場合がある.そこで,提案手法では短期間の SNR 分布に対する統計量から端末の移動に伴う LOS/NLOS の切り替わりを検知する.これによって,フィンガープリントの境界を通過した場合に切り替わり後の地点の存在尤度を一時的に高めることができ,安定した結果が得られる.フィンガープリントの境界通過検知について大阪大学構内で実験を行った結果,検知率,正解率はともに高いことがわかり,平均を用いた場合は検知率は 97%,正解率は 95%,遅延時間は 3.5秒,変化量を用いた場合は検知率は 84%,正解率は 98%,遅延時間は 1.9秒となることがわかった.
著者
西村 友洋 樋口 雄大 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2511-2523, 2014-12-15

スマートフォンの普及にともない,歩行者向けのナビゲーションが広く利用されてるようになっている.日常的に多くの人々が往来する地下街や商業ビルなどにおいて,各地点の混雑状況を把握することができれば,ユーザの状況に応じた移動支援などが可能になり,ナビゲーションシステムの利便性が大幅に向上することが期待される.そこで本論文では,スマートフォンに内蔵されたマイクおよび加速度センサを用いて端末保持者の周囲の雑踏音およびユーザ自身の歩行動作をセンシングすることで,周辺の混雑状況を推定する手法を提案する.一般に混雑時には周囲の群衆の歩行速度に合わせて移動するため,平時と比べて歩行のステップ周期に変化が生じる.また,混雑時は,環境音の低周波成分が増大する傾向がある.提案手法では,これらの知見に基づき,加速度および環境音の測定値から特徴量を抽出し,各ユーザのモバイル端末上でリアルタイムに混雑状況の判定を行う.各端末による判定結果をクラウドサーバ上で共有することで,混雑情報の参加型センシングが実現できる.実環境において性能評価実験を行い,周辺の混雑状況を平均約70%の精度で認識できることを確認した.
著者
前川勇樹 内山彰 山口弘純 東野輝夫
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2014-ITS-56, no.17, pp.1-8, 2014-02-27

本稿では,快適な鉄道利用を実現するため,鉄道旅客の乗車車両および各車両の混雑状況を推定する手法を提案する.提案手法は,乗客の持つ携帯端末が受信した近隣端末の Bluetooth シグナルをサーバに集約し,各端末間で観測された RSSI から,それらが同じ車両に存在する確率 (同一車両確率) および端末間の混雑確率を算出する.次に,得られた同一車両確率および一部の端末の (信頼度の高い) 乗車車両情報を用いて全端末の乗車車両を推定し,その結果と端末間の混雑確率を用いて車両毎の混雑を推定する.この際,電車内の乗客移動は一般にあまり見られないことを利用し,同一車両確率を継続的に更新することで,乗降車が発生しても高精度かつ迅速な推定を実現する.大阪都市部における 4 路線において 259 分間に渡り収集したデータを用いて提案手法の評価を行った結果,16 名の各車両位置を精度 83%,車両毎の混雑の有無を F 値 0.75 で推定できることがわかった.
著者
勝田 悦子 内山 彰 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2011-ITS-47, no.18, pp.1-8, 2011-11-03

携帯電話の普及とともに携帯電話にGPSを搭載することが求められるようになり,ナビゲーションなどの目的でGPSを利用する機会が増えている.本研究ではGPSの新しい利用方法として,Signal to Noise Ratio(SNR)などGPSの受信状態を用いて端末が屋内・屋外のどちらに存在するかを判定する方法を提案する.このため,様々な屋内外環境においてGPSの受信状態を収集し,各環境での特性から事前に判別モデルを構築しておくことで,屋内外判定をリアルタイムに実行する.屋内外判定により,屋内外で位置推定法をシームレスに切り替えたり,地図情報と組み合わせた位置推定の精度向上などの実現が期待される.提案手法の精度を確認するため,郊外や都市部など様々な屋内外環境でGPSの信号強度を収集し環境に応じて評価した結果,屋内外が切り替わってから7秒で90%の判定成功率を達成できることを確認した.
著者
中村笙子 廣森聡仁 山口弘純 東野輝夫 山口容平 下田吉之
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1995-2007, 2013-07-03

各世帯における節電やピークシフトの達成のため,電力の売買や蓄積,生成が可能なスマートホームが導入されつつあり,電力消費を伴う家庭行動を効率化することで,電力コストの削減が期待できる.しかし,居住者の都合を無視し,電力コストを削減するためだけにピークシフトを強いると居住者の生活の質を下げかねない.そのため,電力コストの削減と生活の質の維持を両立できるような節電方法を居住者に提示し,無理のない節電を実現できることが望ましい.本研究では,スマートホーム一世帯を対象とし,そこに居住する人や配置された家電の電力消費モデルを提案する.さらに,このモデルを利用し,人の行動と家電の稼働に対し,電力コストと生活満足度を最適化するような行動スケジューリング手法を提案する.加えて,ユーザの嗜好をより詳細に反映するためのフィードバックシステムと,ユーザが行った操作から,スケジュールに対する要望を汲み取るためのユーザインタフェースも提案する.評価実験では,電力コストを抑え,かつ生活満足度の高いスケジュールを導出した.また,フィードバック操作により,ユーザの意図を反映したスケジュールが導出されることを確認した.
著者
山口 弘純 安本 慶一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J101-B, no.5, pp.298-309, 2018-05-01

近年のクラウド集中型アーキテクチャの制約と限界を受けて,ポストクラウドともいうべきエッジコンピューティング環境の構築と未来に関する多数の議論や研究がなされている.現状議論されているエッジコンピューティングアーキテクチャの多くは,従来のクライアントサーバーモデルをエッジサーバーとエッジデバイスのモデルに置き換えることで低遅延並びに帯域の節約を狙ったものであり,クラウドアーキテクチャの自然な拡張といえる.一方で,IoTアプリケーションやサイバーフィジカルシステムなど次世代のITシステムが必要とする「知的データ処理」をエッジコンピューティング環境でどのように行うかについては十分に議論されていない.本論文ではまずエッジコンピューティングに関する現状の動向を俯瞰する.次に,各々が計算機能を有するIoTデバイスやエッジサーバーを連携させ,可能な限りデータやフローの「地産地消」を行い,エッジコンピューティングのような分散計算環境においてもシームレスに知的データ処理のコアサービスを提供する著者らのアプローチを紹介し,今後の展望を述べる.
著者
福島 悠太 三浦 太樹 濱谷 尚志 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL) (ISSN:21888817)
巻号頁・発行日
vol.2017-MBL-85, no.25, pp.1-8, 2017-11-08

無線センサーネットワークにおいて,センサーに付随するマイコンの高機能化 ・ 省電力化が進めば,従来クラウドで行っていた学習や異常検出,判定などのタスク処理をセンサーネットワークにオフローディングし,データ発生場所に近い場所でそれらを効率よく行える自律的な知能センサーネットワークが実現できる.本研究では CNN を対象に,ローカルな無線センサーネットワーク内で分散実行する新しいアーキテクチャを提案し,そのための分散実行プロトコルならびにアルゴリズムを提案する.提案手法はメッシュ型の無線センサーネットワークが面的かつ定期的に取得するデータを対象とし,センサーノードに深層学習におけるユニットの役割を割り当てる.提案手法の有効性を評価するため,1,400 m² 超の実ラウンジスペースの 50 地点の温度データを用いて,通常の CNN による学習と提案手法による分散学習におけるデータ通信量と学習精度の比較を行った.その結果,十分妥当な通信量のもとで,通常の CNN と遜色ない学習精度を達成できることがわかった.
著者
谷村 亮介 廣森 聡仁 梅津 高朗 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL) (ISSN:21888817)
巻号頁・発行日
vol.2015-MBL-75, no.32, pp.1-8, 2015-05-21

冬季に多量の積雪がみられる積雪都市においては,降積雪が交通流に大きな影響を及ぼしている.路面上に雪が堆積することにより,自動車が道路を走行しにくくなるだけでなく,堆積した雪が道路脇に積み上げられることで道路の幅員が狭くなるため,その道路の交通容量は大きく低下する.降積雪が道路交通に与える影響の把握は,積雪都市における交通計画管理上重要な課題である.本研究では,世界有数の積雪都市である札幌市において,ブローブカーデータから得られる道路交通情報,及び降雪量や積雪量などの気象データを収集し,これらのデータを重回帰分析によって分析することで,気象条件の変化に伴う道路交通速度の変動を推定するモデル式を作成する手法を提案する.札幌市内の実道路上のプローブカーデータを用いて提案手法によるモデル構築を行った結果,重相関係数が 0.844 の重回帰式を作成でき,雪道の交通速度の低下は気象データによってある程度説明可能であることを示した.また,複数の路線を対象にしたモデル構築の結果から,ある路線では積雪量以外にも前日最高気温が速度低下に影響を与えていたのに対し,別の路線では前日日照時間が速度低下要因となることなどがわかった.
著者
東野 輝夫 梅津 高朗 安本 慶一 内山 彰 山口 弘純 廣森 聡仁
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

今年度は次のような研究を実施した。(1)屋内空間における高精度トラッキング技術と都市街区や公共交通機関におけるトラッキング・状況理解技術の開発を行った。特に、駅構内(大阪駅など)や列車内の混雑度や乗客の行動を複数人のスマートフォンを用いて高精度に推定する技術などを開発し、その結果をユビキタス系難関国際会議PerCom2018などで発表した。また、(2)都市街区の移動ノードやデータの偏在性、モビリティの偏向性がもたらす課題とそれに対する堅牢で柔軟なフレームワークの構築手法を考案し、その成果が分散システムに関する難関国際会議IEEE ICDCS2018に採録された。さらに、(3)都市街区に多数配置されたマイクロモジュール間の通信機能や超分散型の時空間情報集約機能(自律的ロードバランス、モビリティの自動把握・調整など)をEdge Computingベースで構築し、DCOSS 2017国際会議やMobile Information Systems誌で発表した。また、災害支援のための包括的プラットフォームに関する成果をSMARTCOMP 2017国際会議での招待講演や分散システムに関する国際会議IEEE ICDCS2017で発表した。現在、(4)複数のマイクロモジュールを対象環境に配置し、十数名のモバイルユーザにより人や車のモビリティ収集実験を行うと共に、大阪大学吹田キャンパスでの実証実験を目指した取り組みを開始した。実証実験では、数十台の固定カメラやLIDAR、ドライブレコーダー、スマートフォンなどを併用した包括的プラットフォームを開発し、携帯電話網が部分的に機能しなくなった場合を想定し、(a) 安否確認メッセージなどの伝達、(b) 写真などの災害関連情報の収集、(c) 各エリアでの人流センシングに基づいた実時間空間情報の把握と可視化、などに必要な要素技術の開発を行っている。
著者
内山 彰 勝田 悦子 上嶋 祐紀 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.389-398, 2014-01-15

GPSは多くの携帯端末に搭載され,我々の生活に欠かせないものとなっているが,都市部においてはビルなどの障害物による遮蔽や反射・回折の影響を受け,測位誤差が大きくなることが知られている.そこで本研究ではGPSの見通し状況と建物の3次元モデルを利用した位置精度向上法を提案する.提案手法では建物の形状や配置により,各GPS衛星の見通し状況が地点ごとに決まることに着目する.衛星の見通し状況は,スマートフォンなどで一般に取得可能なGPS信号のSignal to Noise Ratioに基づき推定する.建物の3次元モデルに基づき,衛星の見通し状況を各地点において事前に計算しておき,フィンガープリントを構築する.構築したフィンガープリントと,GPSの受信状況から判定した見通し状況とのマッチングを行うことで存在領域を絞り込み,位置精度向上を図る.大阪駅周辺で取得したGPSログを用いて提案手法の性能を評価した結果,平均正解率81%でGPS測位結果の誤差範囲に対して17%相当の領域に絞り込みが可能なことが分かった.
著者
木山 昇 楠田 純子 藤井 彩恵 内山 彰 廣森聡仁 梅津 高朗 中村 嘉隆 大出靖将 田中 裕 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1916-1929, 2010-09-15
被引用文献数
2

本論文では,大規模事故や災害時に発生する多数の傷病者の生体情報(バイタルサイン)をリアルタイムで一括監視し,現場での救命活動を支援する電子トリアージシステムの設計開発について述べる.本システムでは,IEEE802.15.4および生体センサを備えたセンサノードを傷病者に装着し,それらの間でアドホックネットワークを構築する.これを介して傷病者の生体情報をリアルタイムに収集すると同時に,センサノード間の無線通信情報を基にノードの位置推定を行い,%救命活動従事者医療従事者に対して傷病者の病状と大まかな位置に関する情報を提供することで救命活動を支援する.開発したシステムを大学附属病院で実施されたトリアージ演習などで使用し,システムの有用性を確認するとともに今後の改良に向けた情報収集を行った.In this paper, we consider situations where many persons are simultaneously injured in large accidents and disasters, and propose an advanced electronic triage system called e-Triage for sensing physical condition of those injured persons and collecting the sensed data in IEEE802.15.4-based wireless ad-hoc networks. The e-Triage system presents dynamic change of injured persons' location and physical condition on monitors in real time. We have evaluated our system through a triage training held in a hospital. From the experimental results, we have confirmed the effectiveness of the e-Triage system and obtained feedback from doctors and nurses.
著者
濱田 淳司 内山 彰 山口 弘純 楠本 真二 東野 輝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.8, pp.17-24, 2009-01-22
被引用文献数
1

本稿では,無線アドホック通信を用いて,携帯情報端末を保持する歩行者や車載端末を搭載した車両 (ノード) の密度分布をリアルタイムに推定する方法を提案する.各ノードが周辺のノード密度分布を把握できれば,交通状況に応じた高度ナビゲーションや混雑するイベントでの歩行者誘導など高度交通システムにおける様々なサービスなどへの応用が期待できる.提案手法では,各ノードは GPS などで自身のおおよその位置を把握できるものとし,隣接端末が保持するノード分布情報をアドホック通信で定期的に受信することで自身が把握するノード分布情報を更新する.また各ノードがノード分布の変化予測を行うことで時間経過によるノード分布の変化にも追随する.シミュレーション実験を行い,実密度分布と推定密度分布に対して単位領域ごとの密度値の順位付けの相関を導出した結果,相関係数が 0.64 から 0.84 となり,両者の相似度が十分高いことが示された.In this study, we propose a method for mobile wireless nodes, which may be pedestrians or vehicles with information terminals, to estimate the density of mobile nodes in their surroundings. The method enables to provision intelligent services which are environment-aware with highly dynamic movement of nodes, like intellectual navigation that tells the user the best route to detour congested region. In the proposed method, each node is assumed to know its location roughly (i.e. within some error range) and to maintain a density map covering its surroundings. This map is updated when a node receives a density map from a neighboring node. Also by estimating the change of the density, taking into account the movement characteristics of nodes, it is updated in a timely fashion. The simulation experiments have been conducted and the correlation between the ranks of density values of unit cells in the real and estimated density maps has been measured. The results in two different scenarios have shown that the proposed method could attain the correlation coefficients 0.64 and 0.84, indicating the high accuracy of the estimated density maps.