- 著者
-
植田 章
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.1-17, 2008-03-01
本稿は,障害者自立支援法による福祉サービスの提供と新たな事業体系への移行が福祉施設・事業所の運営と福祉実践にどのような影響をもたらしているのか,人員,設備および運営に関する基準からその問題点を明らかにした。知的障害者入所更生施設における業務調査では,障害者支援の特徴や固有の専門性として,問題対応型の支援の提供にとどまらず,予防的な視点からも支援が提供されている点,基本的な日常生活支援や外出支援においては,利用者のわずかな変化への気づきを通して,事態を予測した対応が随所でなされている点,生活全体を支援する視点を疎かにしていない点が浮き彫りになった。また,職員の働きかけが,職員聞の連携,集団性の確保と利用者の日常的な関係づくり,利用者の「想いや意欲」に寄り添う姿勢を重視してなされている点も明らかになった。障害者自立支援法の新たな事業移行では,施設入所支援等の「暮らしの場」が位置づけられているが,不十分な職員配置基準や設備基準,低い報酬問題に見るように,その移行は必ずしも容易ではなく,業務調査で浮き彫りにされた福祉実践の専門性を担保するものとはなってはいない。こうした点から,あらためて暮らしの場を支える機能と専門性を検討することの重要性について論じた。