- 著者
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菅 裕
- 出版者
- 日本教科教育学会
- 雑誌
- 日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.4, pp.65-74, 2000-03-31
本研究では,音楽教師の信念が内面においてどのような構造を有しているか,また,そのことが授業の流れや児童にどのような影響を及ぼしているか,について現象学的に考察することを目的とし,福島大学附属小学校の山本浩教諭による音楽授業への参与観察と授業後の教師へのインタビューの分析を行っている。その結果,1.表現のネットワークとしての音楽体験をとおして,児童の音楽的価値観を広げていくために,2.教師は徹底して状況に即応する支援者の立場に立ち,3.授業を音をとおしたコミュニケーションの場としていくことを重視する,山本教諭の信念の構造が明らかになった。この構造は,全体として一貫性をもっており,それに基づく安定した授業運営の結果,児童は,合奏活動を教師の手を借りずに組織するようになり,自分たちの演奏を昼休みのフリーコンサートとして校内で積極的に発表するまでに成長した。同時に,山本教諭が「担任としての役割」と「音楽教師としての役割」と間の葛藤を内面に抱えていることも明らかになった。