著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.244, pp.31-36, 2010-10-16
参考文献数
12
被引用文献数
4

論理と感情は,原初的には生命の生存本能の不可分一体な発現であり,感情は感覚と遺伝子記憶とのパターン認識,論理は感覚と記憶の演算結果にもとづいて行動を引き起こす引き金として発展したと考えられる.高等生物は,後天的記憶を獲得・蓄積できるようになり,変転する世界に対応したより柔軟な記憶体系を構築するようになった.ヒトは,言語というデジタル符号メカニズムを獲得したために,感覚も記憶も決断もすべて言語の表現型で代用できるようになった.自然言語も人工言語もデジタルであり,表現型である.その背後にある遺伝子型の論理や感情を評価するためには,表現型を生みだす回路をモデル化することが必要である.筆者は言語を生みだす回路のモデルとして,3つの神経系(生理)モデルを提案する.神経系モデルは,論理が生命の生存本能の発現であることを前提としており,論理と感情が未分化で知能を持たない「反射モデル」,論理と感情が分化して知能の記憶をもつ「適応モデル」,言語による符号化処理が行われるヒトの「言語情報処理モデル」という3つの進化の段階に対応するため,言語に固有の問題を特定しやすい.

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