著者
下沢 敦
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
no.27, pp.125-144, 2011-03-31

初期の室町幕府が自ら発した法令の中で使用していた大犯三箇条の語は、大番催促・謀叛・殺害人の合計三項目から成る鎌倉時代の守護の職権事項全三箇条を表す一個独立の法令用語であったと考えられる。しかし、鎌倉時代の守護の職権事項全三箇条の全てを重大な犯罪行為の意味を持つ大犯の語によって矛盾なく統一的に捉えるのは、困難である。小稿では、既に鎌倉時代前期に謀叛・殺害の二種類の犯罪行為を犯過として一括りに捉える見方が存在していた事実に着目し、それを拠り所として、大番催促・謀叛・殺害人の合計三項目から成る大犯三箇条を大番催促・犯過人三箇条として捉え返した。その上で、大犯三箇条の中の大犯の語を分解し、大を大番催促の冒頭の一字を取った略号、犯を犯過人の冒頭の一字を取った略号と見て、大犯の語をそれらの略号の連記として捉え直し、結局、大犯三箇条とは、大番催促・犯過人三箇条の表現を短縮した単なる便宜上の略称に過ぎなかったと結論した。更に、単なる便宜上の略称としての大犯三箇条の語は、少なくとも大番催促が廃絶された南北朝時代以後には成立し得ないことをも推定した。

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