著者
杉山 佳生
出版者
公益社団法人 全国大学体育連合
雑誌
大学体育学 (ISSN:13491296)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.3-11, 2008

本研究の目的は、スポーツの実践を主たる課題とする大学の体育授業において、学生のコミュニケーションスキルにどのような変化が見られるのかを検討し、その向上プロセスの解明に結びつく知見を得ることであった。調査対象者は、選択科目として開講されている大学の卓球の授業に参加し、調査の実施に同意した大学1、2年生67名である。これらの学生は、授業の序盤と終盤に、コミュニケーション基本スキル尺度(ENDE2)、感情コミュニケーションテスト(ACT)、及び対人的志向性尺度に回答した。また、ダブルスの試合を主として行った6回の授業において、試合終了時及び授業終了時に、コミュニケーションや満足感に関する自己評価を行った。得られた結果は、以下のとおりである。1)授業の前後において、感情表出スキル得点に有意な向上が認められたが、それ以外のスキルや志向性は、向上しなかった。変化を個別に見ると、4分の1から3分の1の学生が、10%程度以上のスキル得点の上昇を示していた。2)ダブルスの試合時におけるコミュニケーションについての自己評価は、解読、伝達のいずれの側面においても、授業後半で向上していた。3)授業時の自己評価の変化と授業前後のコミュニケーションスキル・対人的志向性の変化との間には、一貫した関係は認められなかった。以上の結果を踏まえて、考察では、体育の授業を通じて一般的なコミュニケーションスキルを向上させるためには、般化を意図した適切な介入が必要であると論じられた。また、「個」に焦点を当てた研究の必要性が指摘された。

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