著者
野田 浩資
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.21-37, 1996-09-20

本稿では、岩手県平泉町の柳之御所遺跡の保存問題を検討することを通じて、〈歴史的環境〉という問題領域の特質と〈歴史的環境〉をめぐる地域の意思決定について検討を加える。従来のような「住民 対 行政」の二項の対立図式ではなく、専門家の役割に注目して「住民/専門家/行政」の三項図式を設定することにより、専門家相互もしくは専門家と住民・行政との間の相互作用過程を浮び上がらせ、〈歴史的環境〉をめぐる問題のダイナミックスをとらえてみたい。柳之御所遺跡の保存問題においては、住民団体、歴史学・考古学の専門家団体、地元マスコミという多様な担い手による保存運動が展開された。その過程で、歴史学・考古学の専門家による価値判断が行政によって重視され、一方、歴史学・考古学の専門家は(1)行政内の発掘担当者、(2)保存運動の担い手、(3)遺跡の価値の審判者という3重の役割を果たしていた。また、歴史学・考古学の専門家と地域住民、行政の間にはパースペクティブのずれが存在し、その中でどのように地域の意思決定がなされたかを明らかにする。

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