著者
牧野 厚史
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.8, pp.181-197, 2002-10-31

日本の大規模遺跡保存のモデルとなっている佐賀県吉野ヶ里遺跡の保存現場を事例として,遺跡とその周辺自治体を含む地域空間の公共性を土地利用秩序の共同性という視点から検討した。吉野ヶ里遺跡は,1989年,マスコミが遺跡を邪馬台国時代のものと報道したことから,膨大な数の見学者が訪れるようになった。そのため,佐賀県は遺跡の周囲を地域制(ゾーニング)し,景観復原を行う。それは,遺跡の活用策とみなされた。だが,地元と位置づけられていた基礎自治体(町村)の地域計画とのあいだに齟齬が生じた。このプロセスを検討した結果,複合的な土地利用を排除した一面的な地域制(ゾーニング)が齟齬を生じさせたことがわかった。地域空間の公共性を確保するためには,基礎自治体・住民による,遺跡への多面的なかかわりが保障される必要がある。だが,この点で地域制(ゾーニング)の適用の仕方に問題があったといえる。

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