著者
小野 有五
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.12, pp.41-56, 2006-10-31

北海道のシレトコ(知床)は,2005年7月,ダーバンでのユネスコの会議で正式に世界自然遺産に登録された。しかし,シレトコを世界遺産候補地として国内で決定する過程において,アイヌ民族はまったく関与できなかった。しかし,アイヌ民族の「代表」組織である「北海道ウタリ協会」だけでなく,アイヌ民族のいくつかのNPO団体がIUCN(国際自然保護連合)に対してシレトコ世界遺産へのアイヌ民族の参画を求める要請を個別に行ったことで,最終的にIUCNは,アイヌ民族がエコツーリズムを通じてシレトコ世界自然遺産の管理計画に参画することが重要であるという勧告を出した。本論ではまず,日本の社会において,このような異常とも言える事態が起きた要因を分析する。この分析にもとづき,アイヌ民族がおかれている現状を環境的公正とガヴァナンスの視点から考え,先住民族のガヴァナンスを実現する手段としてのアイヌ民族エコツーリズムの戦略について検討する。本論は,研究者が自らの「客観性」や「中立性」を重んじるあまり,自らを常に対象の外において現象の記述に終始し,研究者自身が問題に介入することを避けてきたことや,問題が一応の解決を見てから「研究」を始める,という姿勢への批判的視点にたっている。シレトコ世界遺産問題を具体的な事例として,研究者=運動者という立場から今後の環境社会学の研究のあり方について考えたい。

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@eyenew16 http://t.co/TPzip3CG http://t.co/yDkTgnsf アイヌ民族の扱いだけでなく北海道ウタリ協会=北海道アイヌ協会の役割も伝わるCiNii論文。

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