- 著者
-
猪瀬 浩平
- 出版者
- 環境社会学会
- 雑誌
- 環境社会学研究
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.150-164, 2006
「よそ者」論の要点は,環境運動のダイナミズムを,それに関わる主体の問に存在する,当該地域の自然や社会組織との関わり,拠って立つ価値観の違いによって,説明する点にある。既に指摘されているように,「よそ者」や「地元」という枠組は,固定的なものではなく,常に変容の過程の中にあり,「よそ者」と「地元」との間に連続性を想定した上で,両者を分析概念として維持し,その間を揺れ動く人びとの生き方の様態を描写する必要がある。このような認識に立った上で,本論は,「よそ者」と「地元」との間の折衝を,文化人類学におごいて得られた「学習」論の知見を応用することによって,新たな枠組を模索するものである。そこにおいて,個体中心の知識詰め込み型「学習」モデルが批判され,実践の共同体に参加し,その技能や知識を学びながら,社会関係を再生産していく過程こそが,学習であると定義される。この考えによりながら,本論文では筆者が関わる都市近郊の農的緑地空間である「見沼田んぼ」の取組みを取り上げ,埼玉県の公共政策を受けてはじまった農園活動の中で生起する,「非農家」であるよそ者と「農家」である地元との折衝の過程を素描しながら,「学習」の過程として整理する。