- 著者
-
三輪 清子
- 出版者
- 一般社団法人日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.43-53, 2011-08-31
日本で社会的養護を受ける子どもは,その9割が施設に委託され,里親に委託される者は1割にすぎない.この傾向は戦後から現在に至るまでほぼ一貫して示されている.なぜ里親委託はこれほどまでに低調なのだろうか.本稿の目的は,里親委託と施設委託の関係の推移をマクロデータを用いて計量的に検討し,この問題について考察することにある.まず時系列データから里親委託と施設委託の長期的動態を確認後,先行研究による「施設委託が優先された結果として,里親委託は伸展しなかった」という仮説の検証を試みる.時系列回帰分析の結果,施設の定員充足率は里親委託率に有意な負の効果を有しており,仮説を支持する結果が得られた.同時に,残差分析の結果から,1994〜2000年ごろの時期は他の時期以上に里親委託が抑止された時期であり,逆に2003年前後の時期は予測以上に里親委託が伸展した特殊な時期であることが示された.